筑摩書房創業80周年記念出版

現実性の問題  The Problem of Actu-Re-ality 入不二基義 著

『相対主義の極北』の衝撃から20年―― 「これまで書いてきた著書の中で、最大かつ最深の作品」ついに刊行!

現実性こそ神である――このテーゼは果たして何を意味するのか?世界の在り方をめぐる哲学的探究、その最高到達点

子どものころに抱いた、「離別」と「死別」をめぐる素朴な問いから、哲学の深淵がひらかれる!

現実は果たしてどこに繋がっているのか?

現実性の問題【目次】

はじめに

「現実性の問題」の始まり

1
離別と死別
2
同じか?違うか?
3
現実と可能

第1章

円環モデルによる概観

1

始発点
2

始発点と第一歩
3

更にもう一歩
4

反実仮想と可能性
5

転回――可能性から潜在性へ
6

現実性という力
7

論理・様相・時制
7-1
論理(同一律・排中律・矛盾律)
7-2
様相(可能性と潜在性)
7-3
時制(未来性と過去性)

第2章

現実性と潜在性

1

現実性について
2

潜在性について

第3章

事実性と様相の潰れと賭け

1

事実性と様相
1-1

否定と最小様相
1-2

事実性から現実性へ
1-3

ラッセル的拒否感の役割
2

様相の潰れと確率の潰れ
2-1

事実性と様相の潰れ
2-2

様相の潰れから確率の潰れへ
3

選択と賭けと祈り
3-1

選択と賭け
3-2

賭けと祈り
3-3

祈りと神

第4章

現実の現実性と時間の動性

1

現実の現実性について
2

時間の動性について

第5章

時間・様相・視点

1

三つのポイント
1-1

定まり
1-2

あらかじめ
1-3

必然と偶然
2

ベタな時間推移か、無でさえない未来か
2-1

ベタな時間推移
2-2

無でさえない未来
3

無視点性
4

様相の潰れから無様相へ
5

潜在性

第6章

無関係・力・これ性

1

「無でさえない未来」と「無関係性」
2

「忽然と湧いている今」と「無関係性」
3

「力」としての現実性
4

「このもの主義」を別様に考える
5

「現実性」と「存在物」
……同級生の転校と知り合いの葬式。二つの出来事を比べながら、小学生の私は次のように思っていた。「遠くへ引っ越して会えない」ことと「死んでしまって会えない」ことは、どこがそんなに違うんだろう?(中略)「転校による別れも死亡による別れも、その人にもう会うことはないという点では同じじゃないか」、「遠くへ行った人と亡くなった人では、寂しさはそんなに違うものだろうか?」と私は思っていた。そして、ひどく悲しむ大人たちの姿は、どこか滑稽な感じもあったし、居心地の悪い、腑に落ちない「しこり」のようなものを私に残した。(「はじめに」より)

第7章

無内包・脱内包・マイナス内包

1

内包について
2

マイナス内包
3

無内包
4

マイナス内包と時間
5

無内包・脱内包とこれ性
6

クオリア問題の変容

第8章

「拡張された他者」としての現実性

1

「相貌」相対主義論の概要
2

「中立的な何か」という相貌
3

絶対主義の二重性
4

絶対主義という他者
5

動物という他者
6

存在論的忘却
7

「自由という相貌」のパラドクス

第9章

「無いのではなくて存在する」ではなく

1

「ある」追跡の道
1-1

ベルクソンによる「無」の観念批判
1-2

「欠如」とは違う「空白」
1-3

肯定主義の徹底
1-4

無内包の現実
1-5

「ある」の最右翼
1-6

単一体形成的な矛盾
1-7

「ない」の最左翼へ
2

「ない」追跡の道
2-1

ヴァン・インワーゲンの議論
2-2

「二種類の差異化」の変形
2-3

「無」の区別
2-4

「無」の深まり【1】
2-5

「無」の深まり【2】
2-6

時間に巻き込まれた「無」
3

結論

おわりに

現実性こそ神である

1

アンセルムス体験
2

思考と存在と現実性
3

三者関係と現実性
4

現実性という神
追記とあとがき――Actu-Re-alityについて
初出情報
人名索引
事項索引

現実性の問題  The Problem of Actu-Re-ality 入不二基義 著

入不二基義

現実性の問題 The Problem of Actu-Re-ality

離別と死別の比較から始まり、現実性という力が、神へと至るプロセスを活写した希代の哲学書。入不二哲学の最高到達点がここにある。

四六判上製/440頁/ISBN: 9784480847515/本体3,200円+税

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入不二基義

入不二基義(いりふじ・もとよし)

1958年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業、同大学院博士課程単位取得。専攻は哲学。山口大学助教授をへて、現在、青山学院大学教育人間科学部教授。主な著書に『哲学の誤読』(ちくま新書)、『相対主義の極北』(ちくま学芸文庫)、『時間は実在するか』(講談社現代新書)、『時間と絶対と相対と――運命論から何を読み取るべきか』(勁草書房)、『足の裏に影はあるか? ないか?――哲学随想』(朝日出版社)、『あるようにあり、なるようになる――運命論の運命』(講談社)など。共著に『運命論を哲学する』(明石書店)などがある。