目次
- 一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、
卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話試し読みあり
- 角のたばこ屋は藤に覆われていて毎年見事な花が咲いたが、よく見るとそれは二本の藤が
絡まり合っていて、一つはある日家の前に置かれていたということを、今は誰も知らない - 逃げて入り江にたどり着いた男は少年と老人に助けられ、
戦争が終わってからもその集落に住み続けたが、ほとんど少年としか話さなかった試し読みあり
- 〈娘の話 1〉
- 駅のコンコースに噴水があったころ、男は一日中そこにいて、パーカと呼ばれていて、
知らない女にいきなり怒られた - 大根の穫れない町で暮らす大根が好きなわたしは大根の栽培を試み、
近所の人たちに大根料理をふるまうようになって、大根の物語を考えた - たまたま降りた駅で引っ越し先を決め、商店街の酒屋で働き、配達先の女と知り合い、
女がいなくなって引っ越し、別の町に住み着いた男の話 - 小さな駅の近くの小さな家の前で、学校をさぼった中学生が三人、駅のほうを眺めていて、
十年が経った
- 〈ファミリーツリー 1〉
- ラーメン屋「未来軒」は、長い間そこにあって、その間に周囲の店がなくなったり、
マンションが建ったりして、人が去り、人がやってきた - 戦争が始まった報せをラジオで知った女のところに、親戚の女と子どもが避難してきて
いっしょに暮らし、戦争が終わって街へ帰っていき、内戦が始まった - 埠頭からいくつも行き交っていた大型フェリーはすべて廃止になり、
ターミナルは放置されて長い時間が経ったが、一人の裕福な投資家がリゾートホテルを建て、
たくさんの人たちが宇宙へ行く新型航空機を眺めた - 銭湯を営む家の男たちは皆「正」という漢字が名前につけられていて
それを誰がいつ決めたのか誰も知らなかった
- 〈娘の話 2〉
- 二人は毎月名画座に通い、映画館に行く前には必ず近くのラーメン屋でラーメンと餃子と
チャーハンを食べ、あるとき映画の中に一人とそっくりな人物が映っているのを観た - 二階の窓から土手が眺められた川は台風の影響で増水して決壊しそうになったが、
その家ができたころにはあたりには田畑しかなく、もっと昔には人間も来なかった - 「セカンドハンド」というストレートな名前の中古品店で、アビーは日本語の漫画と小説を見つけ、
日本語が読める同級生に見せたら小説の最後のページにあるメモ書きはラブレターだと言われた - アパート一階の住人は暮らし始めて二年経って毎日同じ時間に路地を通る猫に気がつき、
行く先を追ってみると、猫が入っていった空き家は、住人が引っ越して来た頃にはまだ空き家ではなかった
- 文庫に増補!
- その人には見えている場所を見てみたいって思うんです、一度行ったことがあるのに道がわからなくなってしまった場所とか、ある時だけ入口が開いて行くことができる場所のことを考えるのが好きで、誰かが覚えている場所にもどこかに道があるんじゃないかって、と彼は言った
- 〈ファミリーツリー 2〉
- 水島は交通事故に遭い、しばらく入院していたが後遺症もなく、事故の記憶も薄れかけてきた七年後に出張先の東京で、事故を起こした車を運転していた横田を見かけた
- 商店街のメニュー図解を並べた古びた喫茶店は、店主が学生時代に通ったジャズ喫茶を理想として開店し、三十年近く営業して閉店した
- 兄弟は仲がいいと言われて育ち、兄は勉強をするために街を出て、弟はギターを弾き始めて有名になり、兄は居酒屋のテレビで弟を見た
- 屋上にある部屋を探して住んだ山本は、また別の屋上やバルコニーの広い部屋に移り住み、
また別の部屋に移り、女がいたこともあったし、隣人と話したこともあった
- 〈娘の話 3〉
- 国際空港には出発を待つ女学生たちがいて、子供を連れた夫婦がいて、父親に見送られる娘がいて、
国際空港になる前にもそこから飛行機で飛び立った男がいた - バスに乗って砂漠に行った姉は携帯が通じたので砂漠の写真を妹に送り、妹は以前訪れた砂漠のことを考えた
- 雪が積もらない町にある日大雪が降り続き、家を抜け出した子供は公園で黒い犬を見かけ、
その直後に同級生から名前を呼ばれた - 地下街にはたいてい噴水が数多くあり、その地下の噴水広場は待ち合わせ場所で、
何十年前も、数年後も、誰かが誰かを待っていた
- 〈ファミリーツリー 3〉
- 近藤はテレビばかり見ていて、テレビで宇宙飛行士を見て宇宙飛行士になることにして、月へ行った
- 初めて列車が走ったとき、祖母の祖父は羊を飼っていて、彼の妻は毛糸を紡いでいて、
ある日からようやく話をするようになった - 雑居ビルの一階には小さな店がいくつも入っていて、
いちばん奥でカフェを始めた女は占い師に輝かしい未来を予言された - 解体する建物の奥に何十年も手つかずのままの部屋があり、
そこに残されていた誰かの原稿を売りに行ったが金にはならなかった
お知らせ
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- 新聞
- 2024.04.28
- 読売新聞にて紹介されました。(評者:川口晴美さん)
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- テレビ
- 2024.04.13
- NHK Eテレ「理想的本箱」にて「時間に追われている時に読む本」の1冊として紹介されました。
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- 雑誌
- 2024.04.05
- 「週刊ポスト」にて「時間を忘れる文庫ガイド」で紹介されました。
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- 新聞
- 2024.03.30
- 朝日新聞「藤井光が薦める文庫この新刊!」にて紹介されました。
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- ラジオ
- 2022.4.3
- J-WAVE「ACROSS THE SKY」にて岸本佐知子さんにより紹介されました。
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- WEB
- 2021.3.13
- 〈第1回みんなのつぶやき文学賞〉国内篇 第1位に選ばれました。
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- ラジオ
- 2021.2.26~27
- NHKFM「夜のプレイリスト」に著者が出演しました。
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- 新聞
- 2021.02.03
- 『週刊新潮』(2/11号)「ベストセラー街道をゆく!」に倉本さおりさんによる書評が掲載されました。
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- 新聞
- 2020.12.27
- 読売新聞にて、橋本倫史さんの「2020年の3冊」として紹介されました。
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- 新聞
- 2020.12.27
- 東京新聞にて、岡野宏文さんの「2020私の3冊」として紹介されました。
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- 新聞
- 2020.12.27
- 北海道新聞にて、三角みづ紀さんの「今年の3冊」として紹介されました。
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- 新聞
- 2020.12.26
- 朝日新聞にて、押切もえさんの「今年の3点」として紹介されました。
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- WEB
- 2020.12.25
- 紀伊國屋書店スタッフが全力でおすすめするベスト30「キノベス!2021」の第11位に選ばれました。
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- 新聞
- 2020.12.8
- 読売新聞にて、武田将明氏さんの「識者が選んだ3冊」として紹介されました。
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- 新聞
- 2020.10.10
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朝日新聞にて押切もえさんによる書評が掲載されました。
そっと届ける 時の移り変わり
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- 雑誌
- 2020.10.7
- 「群像」11月号に佐々木敦さんによる書評が掲載されました。
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- 新聞
- 2020.9.27
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産経新聞にて青木奈緒さんによる書評が掲載されました。
周到、緻密な時空の物語
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- 新聞
- 2020.9.26
- 毎日新聞に著者インタビューが掲載されました。
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- 新聞
- 2020.9.14
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読売新聞に武田将明さんによる書評が掲載されました。
日常の不思議さが浮かび上がる33篇からなす世界
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- 新聞
- 2020.9.5
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東京新聞に佐野史郎さんによる書評が掲載されました。
静かに時空を超える感覚
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- WEB
- 2020.9.1
- 家庭画報.comで著者インタビュー(前編)が掲載されました。
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- ラジオ
- 2020.8.31
- NHKラジオ「ラジオ深夜便」でロバート・キャンベルさんに紹介されました。
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- ラジオ
- 2020.8.31
- FMヨコハマ「あの小説の中で集まろう」で燃え殻さんに紹介されました。
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- 新聞
- 2020.8.30
- 読売新聞に橋本倫史さんによる書評が掲載されました。
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- WEB
- 2020.8.28
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日経ビジネスに仲野徹さんによる書評が掲載されました。
『百年と一日』~想像力が織りなす世界
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- WEB
- 2020.8.27
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朝日新聞DIGITALに著者インタビューが掲載されました。
「なにげない日常」で出来ている私たち 柴崎友香さん
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- 新聞
- 2020.8.26
- 毎日新聞夕刊「文芸時評」で小川公代さんに取り上げられました。
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- 新聞
- 2020.8.15
- 西日本新聞にて徳永圭子さん(丸善博多店)の激オシ本として紹介されました。
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- 雑誌
- 2020.8.6
- 「ダ・ヴィンチ9月号」で著者インタビューが掲載されました。
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- NEWS
- 2020.7.31
- toi booksにて『百年と一日』刊行記念柴崎友香写真展を開催中です。
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- TV
- 2020.8.1
- TBS系列「王様のブランチ」ブックコーナーで特集されました。