「これらの定義にふれることで、ものの見方が変わったり、ほかのものを定義したくなったり、思考が開けていくきっかけにしていただければいいな、と思います。
「本」の定義についてカフカは「斧である」と言っています(本文303ページ)。この本も、自分の常識が打ち壊される斧、新しい世界を開くための斧、氷に閉じ込められた思い込みや先入観、無意識の世界を開いていく斧の役割を果たしてくれるとうれしいな、と感じています。」
――「まえがき 「定義」とは「勇気ある知性」のあらわれである」より
人間、人生、時間と歴史、自然と神、芸術と思想、愛と憎しみ、善と悪、幸福と不幸、理性と感情、勉強と教育、日常と生活。テーマ別にまとめ、すべてに解説と「豆知識」を収録しています。
<目次>
〈人間〉
- 〔人間〕
人間というものは慣れる存在である。そして私はこれが人間を最も適切に定義していると思う。
──ドストエフスキー - 〔人間〕
人間は自分が食べたものそのものである。
──フォイエルバッハ - 〔人間〕
人間は社会的諸関係の総体である。
──マルクス - 〔人間〕
人間は、ただ神の遊びの具(玩具)になるように、というので創られたのです。
──プラトン - 〔人間〕
人間は万物の尺度である。
──プロタゴラス - 〔人間〕
人間というものは、空想と実際との食い違いの中に気息奄々(えんえん)として暮すところの儚(はか)ない生物にすぎないものだ。
──坂口安吾 - 〔人間〕
人間は、その本性においてポリス的(政治的、社会的)動物である。
──アリストテレス - 〔人間〕
人間とは取引をする動物なり。
──アダム・スミス - 〔人間〕
人間は、動物と超人とのあいだにかけ渡された一本の綱である、一つの深淵の上にかかる一本の綱である。
──ニーチェ - 〔人間〕
人間は、自分でルールをつくって自分でたのしんでいる動物である。
──田辺聖子 - 〔人間〕
ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)
──ホイジンガ - 〔人間〕
人間は屍を持ち運んでいる小さな魂である。
──エピクテトス - 〔人間〕
にんげんは、中途半端な死体として生まれてきて、一生かかって完全な死体になるんだ。
──寺山修司 - 〔人間〕
人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。
──パスカル - 〔女性〕
女性は総合芸術である。
──美輪明宏 - 〔女性〕
元始、女性は実に太陽であった。
──平塚らいてう - 〔女〕
人は女に生まれない。女になるのだ。
──ボーヴォワール - 〔人格〕
人格とは高きものと全く低いものとが一つになったものである。……人格の高さとは、この矛盾を持ちこたえることである。
──ヘーゲル - 〔大人〕
おとなは、みんな、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、ほとんどいない)
──サン=テグジュペリ - 〔大人〕
大人と云うものは成長した樹木のようなもの(中略)若い方々は是れから新しく咲こうとする花。
──与謝野晶子 - 〔日本人〕
日本人とは、日本人とは何かという問を、頻(しき)りに発して倦(う)むことのない国民である。
──加藤周一 - 〔エグゼクティブ〕
ゲリラ戦においては、兵士全員がエグゼクティブなのだ。
──ドラッカー - 〔馬鹿〕
最高の馬鹿とは、自分がそうでないと思い、自分以外のすべてがそうだと思っている人である。
──バルタサル・グラシアン - 〔愚か者〕
どんな愚か者でも、他人の短所を指摘できる。そして、たいていの愚か者が、それをやりたがる。
──ベンジャミン・フランクリン - 〔敵〕
倒すだけが能ではない。敵がなければ教えもない。従って進歩もない。
──松下幸之助 - 〔われ〕
われ思う、ゆえにわれあり。
──デカルト - 〔謙遜〕
度のすぎた謙遜は、虚栄心である。
──コッツェブー - 〔殺人〕
一つの殺人は悪漢を生み、百万の殺人は英雄を生む。数量が神聖化する次第です。
──チャップリン - 〔社交〕
あらゆる社交はおのづから虚偽を必要とするものである。
──芥川龍之介 - 〔社交〕
君子の交わりは淡き水の如し、小人の交わりは甘きこと醴(あまざけ)の如し。
──荘子 - 〔社交〕
社交の秘訣は、真実を語らないということではない。真実を語ることによってさえも相手を怒らせないようにすることの技術である。
──萩原朔太郎 - 〔世間〕
世間というものが、一人ひとりの生きている人間のつながりである、ということを理解した。
──佐野洋子 - 〔世間〕
世間というのは、君じゃないか。
──太宰治 - 〔自由〕
自由というのは「いいたいことをいい、したいことをすることができる」ということ。
──プラトン - 〔自由〕
自由と申すものは、天帝が人間に与えたもうた、最も高価な賜物の一つである。
──セルバンテス - 〔自由〕
自由とは、法の許すかぎりのすべてのことをなす権利である。
──モンテスキュー - 〔自由〕
人間は自由の刑に処せられていると表現したい。
──サルトル - 〔天才〕
天才とは一パーセントのひらめきと、九九パーセントの努力である。
──エジソン - 〔道化〕
(道化は、)自分の、人間に対する最後の求愛でした。
──太宰治 - 〔アイデンティティ〕
アイデンティティーというのは、最終的に(略)一つ持っていればいいんだ。言わば指紋だよ。
──三島由紀夫 - 〔呼吸〕
呼吸は命の言葉なのである。だから呼吸を変えれば、気分も変わる。
──沖正弘 - 〔姿勢〕
姿勢とは、私がこの世界に存在し、世界に触れている、その形である。
──竹内敏晴 - 〔強さ〕
真の強さとは人から生まれる。みんなの信頼が俺を強くしてくれる。
──パク・セロイ
〈人生〉
- 〔人生〕
人生は、世界がもとめるから富を見いだし、愛がもとめるから価値を見いだす。
──タゴール - 〔人生〕
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
──徳川家康 - 〔人生〕
人生は短いと人びとは言う。ところがわたしの見るところでは、彼らは人生を短くしようと努めているのだ。
──ルソー - 〔人生〕
あなたは、人生という劇の作者である詩人に、ある役を演じるように命じられた一人の役者であることを忘れてはならない。
──エピクテトス - 〔人生〕
人の一生は、動きまわる影にすぎない。
──シェイクスピア - 〔人生〕
人生は一行のボオドレエルにも若かない。
──芥川龍之介 - 〔人生〕
人生は一箱のマッチに似ている。重大に扱うのは莫迦莫迦しい。重大に扱わなければ危険である。
──芥川龍之介 - 〔人生〕
人生はクローズアップで観れば悲劇だが、ロングショットで観れば喜劇である。
──チャップリン - 〔人生〕
人生は道路のようなものだ。一番の近道は、たいてい一番悪い道だ。
──フランシス・ベーコン - 〔人生〕
人生は自転車に乗ることに似ています。バランスを保つためには、動き続けなくてはならないのです。
──アインシュタイン - 〔人生〕
人生は芝居で、この世はリハーサルなしだ。
──メル・ブルックス - 〔人生〕
人生とは、何かを計画している時起きてしまう別の出来事のこと。
──シリア・ハンター - 〔世の中〕
世(の)中は 地獄の上の 花見哉(かな)
──小林一茶 - 〔世の中〕
おまえと世の中との闘争では、世の中の側に立て。
──カフカ - 〔生きる〕
生きるとは行動することである。ただ呼吸することではない。
──平塚らいてう - 〔生きる〕
生きるということは精神の奇妙な部屋のなかに入ることである。
──マルティン・ブーバー - 〔若さ〕
わたしの若さの源泉は、想像力です。みなさんも想像力を枯らさないでください!
──ターシャ・テューダー - 〔死〕
私が存在する時には、死は存在せず、死が存在する時には、私はもはや存在しない。
──エピクロス - 〔死〕
賢人ほど平静な心で、愚かな人間ほど落ち着かぬ心で死んでいく。
──キケロ - 〔死〕
われ未だ生を知らず、焉(いずく)んぞ死を知らんや。
──孔子 - 〔死〕
死は一種の救いかもしれないわ。
──マリリン・モンロー - 〔死〕
死は、私たちの賢い仲のよい兄弟であって、潮時を心得ているのだから、安心してそれを待っていればよいのだ。
──ヘッセ - 〔死〕
今日死を決するの安心は四時(しじ)の循環に於(おい)て得る所あり。(略)十歳にして死する者は十歳中自(おのづか)ら四時あり。(略)三十は自ら三十の四時あり。
──吉田松陰 - 〔金〕
金は良い召使でもあるが、悪い主人でもある。
──ベンジャミン・フランクリン - 〔金〕
お金は、人間の抽象的な幸福です。だから、もはや、具体的に幸福を楽しむ能力のなくなった人は、その心を全部、お金にかけるのです。
──ショーペンハウアー - 〔収入〕
収入は靴のようなものである。小さすぎればわれわれを締めつけ、わずらわす。大きすぎればつまずきや踏み外しの原因となるのだ。
──ジョン・ロック - 〔贅沢〕
ほんとうの贅沢というものは、たったひとつしかない。それは、人間関係に恵まれることだ。
──サン=テグジュペリ - 〔貧乏〕
貧乏は、自然の目的(快)によって測れば、大きな富である。これに反し、限界のない富は、大きな貧乏である。
──エピクロス - 〔貧乏〕
貧乏とはするもんじゃありません。味わうものですな。
──古今亭志ん生 - 〔失敗〕
人の世に失敗ちゅうことはありゃせんぞ。
──坂本竜馬 - 〔勝者〕
勝者とは、納得がいくまで戦い続ける人のこと。
──ビリー・ジーン・キング - 〔勝負〕
勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし。
──松浦静山 - 〔運〕
運・不運はナイフのようなものだ。その刃をにぎるか柄をにぎるかで、われわれを傷つけたり、役にたったりする。
──ローウェル - 〔運命〕
運命はどこかよそからやってくるものではなく、自分の心の中で成長するものである。
──ヘッセ - 〔不可能〕
不可能とは、自分の力で世界を切り開くことを放棄した、臆病者の言葉だ。
──モハメド・アリ - 〔習慣〕
習慣は人間の守護神(ダイモン)である。
──ヘラクレイトス - 〔習慣〕
習慣という怪物は、悪い行いに対する感覚を食べつくしてしまうが、反面、天使でもある。善い行いに美しい服を着せて、しっくりと体になじませてくれるのだ。
──シェイクスピア - 〔習慣〕
考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる。
──作者不詳 - 〔睡眠〕
我々の人生というものは死から融通してきた借金のようなものだとも考えられよう、そうすると睡眠はこの借金に対して日ごとに支払われる利子だということになる。
──ショーペンハウアー - 〔遍歴の騎士〕
遍歴の騎士という者には、いかなる負傷も、たとえその傷口から内臓がはみ出したところで、一切それについて泣き言を言うことは許されていないのだ。
──セルバンテス
〈時間と歴史〉
- 〔歴史〕
すべてのこれまでの社会の歴史は、階級闘争の歴史である。
──マルクス/エンゲルス - 〔歴史〕
すべての偉大な世界史的事実と世界史的人物はいわば二度現れる。一度目は偉大な悲劇として、もう一度はみじめな笑劇として。
──マルクス - 〔時間〕
時間とは最高の殺人者である。
──アガサ・クリスティ - 〔時間〕
時間こそ最も稀少で価値のある資源である。
──ドラッカー - 〔時〕
時は金なり。(Time is Money.)
──ベンジャミン・フランクリン - 〔未来〕
未来とは、今である。
──マーガレット・ミード - 〔伝説〕
伝説というのは、過去の業績にしがみついている老人のことだろ。オレは今でも現役だ。
──マイルス・デイヴィス - 〔戦争〕
戦争は人間対人間の関係ではなくて、国家対国家の関係なのである。
──ルソー - 〔戦争〕
戦争は、敵を我々の意志に屈伏させるための暴力行為である。
──クラウゼヴィッツ - 〔敗戦〕
敗戦とは、自分は負けてしまったと思う戦いのことである。
──サルトル - 〔革命〕
革命は熟せば自然と落ちる林檎ではない。あなた自身が落とすのだ。
──チェ・ゲバラ - 〔革命〕
革命を成功させるのは希望であって、絶望ではないのだ。
──クロポトキン - 〔イノベーション〕
経済活動の中で生産手段や資源、労働力などを、それまでとは異なる仕方で新結合すること。
──シュンペーター - 〔支配〕
支配とは、すわることである。
──オルテガ・イ・ガセット - 〔平和〕
平和は強制的に保てるものではない。理解することでしか、平和は生まれないのだ。
──アインシュタイン - 〔平和〕
私はもっとも正しい戦よりも、もっとも不公平でも平和を好む。
──キケロ - 〔平和〕
平和は微笑みから始まります。
──マザー・テレサ - 〔平和〕
平和とは、毎日、毎週、毎月のプロセスによって生まれるもの。少しずつ人々の意見を変え、ゆっくりと古い壁を崩し、新しい仕組みを静かに築いていくことなのです。
──ジョン・F・ケネディ - 〔資本〕
(資本とは)蓄積されかつ貯蔵された労働の一定量のことである。
──アダム・スミス - 〔賃金〕
賃金は、自分が生産した商品にたいする労働者のわけまえではない。賃金は、資本家が一定量の生産的労働力を買いとるのにもちいる、すでにある商品の一部である。
──マルクス - 〔搾取〕
俺たちをウンと働かせて、締木(しめき)にかけて、ギイギイ搾り上げて、しこたま儲けることなんだ。(略)まるで蚕に食われている桑の葉のように、俺達の身体が殺されているんだ。
──小林多喜二 - 〔労働〕
労働することが疲れ果ててしまうのは、物質のように、時間の従属物となってしまうことだ。思考は(略)、ただ瞬間から瞬間へと移って行くことを強いられる。それが服従するということなのだ。
──シモーヌ・ヴェイユ - 〔社会〕
あらゆる社会組織は、信用あるいは信頼を基礎としている、と言いたい。
──ポール・ヴァレリー - 〔法律〕
法律はクモの巣に似ている。小さなハエを捕えるが、すずめバチは通りぬけるにまかせる。
──スウィフト - 〔法〕
法とは手柄を見て報償を与え、能力に応じて官職を授けるものである。
──韓非子 - 〔アヒンサー〕
人と自然が平和で調和を保ちながら共存できる平和と非暴力の聖域「アヒンサー地域」とする。
──ダライ・ラマ四世
〈自然と神〉
- 〔神〕
神は、我々の内にないとすれば、存在しない。
──ヴォルテール - 〔生物〕
人間を含む生物は、遺伝子の乗り物である。
──リチャード・ドーキンス - 〔生命〕
生命はつねに自己への回帰の中に存する。
──岡倉天心 - 〔生命〕
すべての生命は、初めて息づいた原始的な生物の子孫である。
──ダーウィン - 〔神話〕
神話は宇宙の謎に対して出された最初の答である。(略)神話は、空想の産物というにはとどまらず、人間の最初の知的好奇心の所産でさえあるように思われる。
──カッシーラー - 〔仏道〕
仏道をならうというは、自己をならうなり。自己をならうというは、自己をわするるなり。自己をわするるというは、万法に証せらるるなり。
──道元 - 〔信仰〕
神を感知するのは心であって理性ではない。信仰とはそのようなものである。
──パスカル - 〔信仰〕
不条理ゆえに吾(われ)信ず。
──テルトゥリアヌス - 〔信仰〕
思弁が終わる、まさにそのところで信仰が始まる。
──キルケゴール - 〔進歩〕
進歩によって完成されたものは、すべて進歩によって滅ぶ。
──パスカル - 〔真理〕
だれでもが真理を見ることはできない。がしかし、真理であることはできる。
──カフカ - 〔真理〕
真理とは、経験の試練に耐えられるものです。
──アインシュタイン - 〔真理〕
私の前には、真理の大海原が手をつけられずに横たわっている。
──ニュートン - 〔植林〕
植林とはただ木を植えることではなく、平和維持、生活状況の改善にも関係している。
──ワンガリ・マータイ - 〔星〕
いちばんぼしがでた うちゅうの目のようだ ああ うちゅうがぼくをみている
──まどみちお - 〔魔法〕
魔法とは自分を信じることだ。もしそれができれば、何をするのも可能だ。
──ゲーテ
〈芸術と思想〉
- 〔芸術〕
芸術とは自然が人間に映ったものです。肝腎な事は鏡をみがく事です。
──ロダン - 〔芸術〕
もしごく簡単に芸術を定義しろというなら、芸術は「感覚が、自然の中に霊魂のヴェールを通して認める表現だ」と言おう。
──ポー - 〔芸術〕
芸術とは、嘘の中でも最も美しい嘘。
──クロード・ドビュッシー - 〔芸〕
芸といふものは実と虚との皮膜の間にあるもの也。
──近松門左衛門 - 〔芸〕
私が芸を楽しんでるのを、お客さんが楽しむのや。
──ミヤコ蝶々 - 〔芸術家〕
優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む。
──ピカソ - 〔芸人〕
笑われてやるんじゃなくて、笑わしてやるんだ。
──ビートたけし - 〔映画〕
映画は海である。映画は風である。
──淀川長治 - 〔劇〕
劇においては、(略)現在のうちにすべてがある。(略)現在だけしかあってはならぬ。それが現在としての溌剌さを失うと、とたんに時間の流れが切断される。
──福田恆存 - 〔建築〕
建築は凝固した音楽である。
──シェリング - 〔建築〕
建築とは、ある時代に生まれた情感を、ある物質的形態の中に定着する精神体系である。
──ル・コルビュジエ - 〔音楽〕
われわれが行なうあらゆることは音楽である。
──ジョン・ケージ - 〔ジャズ〕
ジャズとは、自分が何者であるか、でしかない。
──ルイ・アームストロング - 〔目的〕
最高の目的は全く目的を持たないということである。
──ジョン・ケージ - 〔美〕
美とはものの形をとった快楽である。
──サンタヤーナ - 〔美〕
物と物とのあいだにできる影にこそ、美がある。
──谷崎潤一郎 - 〔美〕
美とは、偶然と善の織りなす調和である。
──シモーヌ・ヴェイユ - 〔美〕
美しさは、あなたが自分自身になることを決めた瞬間に生まれます。
──ココ・シャネル - 〔歌〕
歌は遊戯でなくて、皆さんの心の中の最も美しい、最も高い感情に、言葉の姿と音楽の調子とを与えた芸術品なのでございます。
──与謝野晶子 - 〔和歌〕
やまとうたは、人の心を種(たね)として、万(よろず)の言(こと)の葉とぞなれりける
──紀貫之 - 〔言葉〕
人の言葉は残ります。それは山よりも川よりも強いとさえ思える。
──ドナルド・キーン - 〔言葉〕
言葉というのは不思議なものよ。(略)人間の音色なのよ。
──杉村春子 - 〔言葉〕
言葉は翼を持つが、思うところには飛ばない。
──T・S・エリオット - 〔言葉〕
言葉はかけ算に似ている。かけ算ではどんな数も最後にマイナスをかけたら、答えはマイナスになる。
──斎藤茂太 - 〔落語〕
落語とは、人間の業の肯定である。
──七代目立川談志 - 〔思想〕
危険ならざる思想などおよそ思想と呼ぶに値しない。
──オスカー・ワイルド - 〔宗教〕
宗教は民衆のアヘンである。
──マルクス - 〔自己本位〕
自己が主で、他は賓(ひん)であるという信念は、今日の私に非常の自信と安心を与えてくれました。
──夏目漱石 - 〔楽観主義〕
楽観論者と悲観論者は、幸せな馬鹿と不幸な馬鹿だ。
──映画『黒衣の花嫁』 - 〔マルクス主義〕
私はマルクス主義者ではない。
──マルクス - 〔民主主義〕
民主主義とは、人民の人民による人民のための脅しにすぎない。
──オスカー・ワイルド - 〔プラグマティズム〕
プラグマティックな方法というものは、(略)結実、帰結、事実に向おうとする態度なのである。
──ウィリアム・ジェームズ - 〔スタイル〕
スタイルとは、一貫した変形作用である。
──メルロ=ポンティ
〈愛と憎しみ〉
- 〔愛〕
愛は幻想の子であり、幻滅の親である。
──ミゲル・デ・ウナムーノ - 〔愛〕
一人の人間を愛するとは、その人間と一緒に年老いるのを受け入れることにほかならない。
──アルベール・カミュ - 〔愛〕
愛は、地中にあって変わらない巌(いわお)のようなものである。
──エミリー・ブロンテ - 〔愛〕
愛は寛容であり、愛は情け深い。(略)愛はいつまでも絶えることがない。
──『新約聖書』 - 〔愛〕
愛するということは、不運である。おとぎ話の人々のように、魔法が解けるまではそれに対してどうすることもできないのだ。
──プルースト - 〔愛〕
愛とお金の違いは何か。人にいくらかあげてしまうとお金は減る。しかし愛をあげた時には、愛は増えるのである。
──ジョン・テンプルトン - 〔愛〕
愛とはレンガのようなもの。それで家を建てることもできるし、死体を水に沈めることもできる。
──レディー・ガガ - 〔恋愛〕
恋愛は、人生の花であります。
──坂口安吾 - 〔恋愛〕
恋愛が与えうる最大の幸福は、愛する女の手をはじめて握ることである。
──スタンダール - 〔好き〕
「後ろ姿」をいいなぁと思えたら、それは好きだっていうことだと思います。
──糸井重里 - 〔責任〕
「世話をした相手には、いつまでも責任があるんだよ。守らなければならないんだ」
──サン=テグジュペリ - 〔許す〕
弱い者ほど相手を許すことができない。許すということは、強さの証だ。
──マハトマ・ガンジー - 〔許す〕
他人を許すことのできない人は、自分自身が渡らなければならない橋を壊しているようなものだ。
──トーマス・フラー - 〔復讐〕
忘却に勝る復讐はない。
──バルタサル・グラシアン - 〔嫉妬〕
ご用心なさい、将軍、嫉妬というやつに。こいつは緑色の目をした化け物で、餌食にする肉をもてあそぶのです。
──シェイクスピア - 〔妬み〕
ねたみとは魂の腐敗である。
──ソクラテス - 〔結婚〕
結婚は鰻の梁と同じ、外にいる者は入ろうとし、中にいる者は出ようとする。
──ノルウェイのことわざ - 〔結婚〕
判断力の欠如で結婚し、忍耐力の欠如で離婚し、記憶力の欠如で再婚する。
──アルマン・サラクルー - 〔夫婦〕
夫婦は親しきをもって原則とし親しからざるをもって常態とす。
──夏目漱石
〈善と悪〉
- 〔悪〕
自己認識を持っているのは、悪だけである。
──フランツ・カフカ - 〔悪〕
悪とは他人の奇妙な魅力を説明するために、善良な人々が発明した神話である。
──オスカー・ワイルド - 〔悪〕
悪とは超人的なものではなく人間である。
──アガサ・クリスティ - 〔悪人〕
たいていの人間は、悪人である。
──ビアス - 〔悪人〕
(平生は)少なくともみんな普通の人間なんです。急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。
──夏目漱石 - 〔善〕
無条件に善とみなすことができるものはただ一つ、善なる意志以外に考えることはできないのです。
──カント - 〔善〕
上善は水のごとし。水は善く万物を利してしかも争わず。
──老子 - 〔善行〕
善行は、お返しができると思われる限りは、快く受け取られる。その限度を越えると、感謝の代わりに憎悪が返ってくる。
──モンテーニュ - 〔恐怖〕
恐怖とは不完全な知識である。
──アガサ・クリスティ - 〔過ち〕
子曰わく、過ちて改めざる、是を過ちと請う。
──孔子 - 〔罪〕
人間にとって最大の罪は、不機嫌であること。
──ゲーテ
〈幸福と不幸〉
- 〔幸福〕
幸福は幸福の中にあるのではなく、それを手に入れる過程の中だけにある。
──ドストエフスキー - 〔幸福〕
幸福は香水のごときものである。人に振りかけると、自分にも必ずかかる。
──ラルフ・ワルド・エマーソン - 〔幸せ〕
「幸福とは、健康と物忘れの早さである」ですって! わたしが思いつきたかったくらいだわ。だって、それは真実だもの。
──オードリー・ヘプバーン - 〔幸せ〕
人間三百六十五日、何の心配も無い日が、一日、いや半日あったら、それは仕合せな人間です。
──太宰治 - 〔幸せ〕
どうして俺は、今までこの高い空を見なかったのか? 今やっとこれに気がついたのは、じつになんという幸せなことだろう。
──トルストイ - 〔幸せ〕
一番幸せなのは、幸福なんて特別必要でないと悟ることだ。
──サローヤン - 〔不幸〕
すべての幸福な家庭はお互いに似ているが、不幸な家庭はそれぞれの流儀で不幸である。
──トルストイ - 〔希望〕
希望は、底のふかい海のうえでなければけっしてその翼をひろげない。
──ラルフ・ワルド・エマーソン - 〔希望〕
希望は、(略)地上の道のように、初めから道があるのではないが、歩く人が多くなると初めて道が出来る。
──魯迅
〈理性と感情〉
- 〔理性〕
理性的なものはすべて現実的であり、現実的であるものはすべて理性的である。
──ヘーゲル - 〔うぬぼれ〕
うぬぼれの心は人間の内部に深く根ざしていて、自分を賞賛してくれる人々を得ようとするのだ。
──パスカル - 〔うぬぼれ〕
己惚れとは、一つのたのしい幻想、生きるための幻想なのですから、実質なんぞ何も要りません。
──三島由紀夫 - 〔心〕
こころにいつわりなし。はた又こころはうごくものにあらず。うごくものは情なり。
──樋口一葉 - 〔心〕
心は、二つの寝室がある家です。一方の部屋には苦しみが、一方には喜びが住んでいます。
──ヤノーホ - 〔心〕
良い心は人を強くする!
──アンネ・フランク - 〔絶望〕
絶望は虚妄だ、希望がそうであるように。
──ペテーフィ・シャーンドル - 〔絶望〕
絶望は死に至る病である。
──キルケゴール - 〔中庸〕
君子は中庸す、小人は中庸に反す。
──『礼記・中庸篇』 - 〔決定〕
最も重要な決定とは、何をするかではなく、何をしないかを決めることだ。
──スティーブ・ジョブズ - 〔道徳〕
道徳は常に恐怖の産物である。
──オルダス・ハクスリー - 〔不安〕
不安とは自由の目まいである。
──キルケゴール - 〔野蛮〕
優れたものを認めないことこそ、即ち野蛮だ。
──ゲーテ - 〔勇気〕
お金がなくなった時には人生の半分が失われる。勇気がなくなった時にすべてが失われる。
──『ユダヤ格言集』 - 〔勇敢〕
勇敢であるということは、見返りを求めず、無条件に誰かを愛すること。
──マドンナ - 〔涙〕
(なみだとは)人間が自分でつくる、世界でいちばん小さい海のことだよ。
──寺山修司 - 〔笑い〕
それはきれいなばらいろで、けしつぶよりかちいさくて、こぼれて土に落ちたとき、ぱっと花火がはじけるように、おおきな花がひらくのよ。
──金子みすゞ - 〔笑い〕
生物のなかで人間だけが笑う。人間のなかでも、賢い者ほどよく笑う。
──『ユダヤ格言集』 - 〔笑い〕
笑いは、敵味方の差別を取り除く。
──ジョン・ミルトン - 〔笑い〕
人の顔を美しくする最高の美容術は、笑いである。
──斎藤茂太 - 〔笑い〕
もっとはっきり言いましょう、笑いは必要なものです。
──ミシュレ - 〔微笑〕
日本人の微笑は、念入りに仕上げられ、長年育まれてきた作法なのである。
──ラフカディオ・ハーン - 〔礼〕
礼とは外の飾りでもって内心を相手に悟らせる手段である。
──韓非子 - 〔偏見〕
偏見はドアから追い出しても、窓から戻ってくる。
──フリードリヒ大王 - 〔常識〕
常識とは一八歳までに身に付けた偏見のコレクションのことを言う。
──アインシュタイン - 〔偶然〕
偶然は幼子である。
──ニーチェ - 〔正義〕
正義とは、強者の利益にほかならない。
──プラトン - 〔忠告〕
必要であればあるほど拒まれるものがある。それは忠告だ。それを余計に必要とする人、すなわち無知な人からいやがられる。
──レオナルド・ダ・ヴィンチ
〈勉強と教育〉
- 〔勉強〕
当時緒方の学生は、十中の七、八、目的なしに苦学した者であるがその目的のなかったのがかえって幸せで、江戸の学生よりもよく勉強ができた。
──福沢諭吉 - 〔勉強〕
勉強することは、変身の恐ろしさのまっただ中にダイブすることだ。
──千葉雅也 - 〔教育〕
教育は、最も高価な投資である。
──ドラッカー - 〔教育〕
教育とは、学校で習ったことをすべて忘れた後に、残っているものである。
──アインシュタイン - 〔学校〕
学校とは小さな社会である。
──ジョン・デューイ - 〔学者〕
学者とは、様々な書物を読んだ人のことなのです。
──ショーペンハウアー - 〔教養〕
教養なんて大人のおもちゃなんだから、あれば遊びが増えるだけの話。
──タモリ - 〔教養〕
教養の無いところに幸福無し。教養とは、まづ、ハニカミを知る事也。
──太宰治 - 〔医学〕
医は仁術なり。仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし。
──貝原益軒 - 〔経験〕
経験はそれだけでは経験にならない。他のもう一つの経験によって乗りこえられた時、初めて一つの経験になる。
──ゲーテ - 〔遊び〕
遊びをせんとや生まれけむ。
──『梁塵秘抄』 - 〔遊び〕
すべての遊びは、まず第一に、自由な行動である。
──ホイジンガ - 〔子ども〕
子どもというものは、元気なようでいて、案外もろくて弱いものです。疲れやすいのです。
──大村はま - 〔友人〕
正しい友人というものは、あなたが間違っている時に味方してくれる者のこと。正しい時には誰だって味方をしてくれるのだから。
──マーク・トウェイン - 〔友〕
友のよろこびを自分のよろこびにすることができる人こそ、ほんとうの友なのであろう。
──神谷美恵子 - 〔創作〕
人が寂寥を感じた時、創作がうまれる。空漠を感じては創作はうまれない。愛するものがもう何もないからだ。/所詮、創作は愛にもとづく。
──魯迅 - 〔才能〕
根本的な才能とは、自分に何かができると信じることだ。
──ジョン・レノン - 〔才能〕
人間が授かった大いなる才能、それは共感する力です。
──メリル・ストリープ - 〔知恵〕
必要のない物を識別して手放すことも、知恵の一つよ。
──ジェーン・フォンダ - 〔評価〕
評価するとは創造することである。
──ニーチェ - 〔比較〕
比較は、自分に対する暴力行為です。
──イヤンラ・ヴァンザント - 〔努力〕
“努力”すれば必ず報われるんだ。(努力しても)報われないとしたら、それはまだ努力とはいえない。
──王貞治 - 〔想像力〕
想像力とは、拡大され組み立てられた記憶以外の何ものでもない。
──ヴィーコ - 〔知識〕
知識は、天国へ飛び立つための翼です。
──シェイクスピア - 〔知性〕
知性は、いうまでもなく強力な筋肉をもってはいますが、人格をもってはいません。(略)目的や価値に関しては盲目なのです。
──アインシュタイン - 〔見る〕
学ぶとは「物をみる」ことであり、「ものを観る」とは、美しいものを毎日解体していくことなのだ。
──ゴッホ - 〔読書〕
あらゆる良書を読むことは、過去の時代にその著者であった、最も教養ある人たちと会話をするようなものである。
──デカルト - 〔本〕
本は、私たちの中にある凍りついた海を割る斧でなければならない。
──カフカ - 〔古典〕
古典とは、誰もが読んでおこうと思いながら誰も読もうとしない本のことである。
──マーク・トウェイン - 〔相談〕
(相談とは)すでに自分で取ろうと決意した行動に対して、改めて他人の賛意を得ようとすることである。
──ビアス - 〔民俗学〕
うずもれて一生終わるであろう人に関する知識を残すのが民俗学。
──柳田國男 - 〔哲学〕
哲学の問題の解決は、メルヘンに登場するプレゼントのようなものである。
──ウィトゲンシュタイン - 〔構え〕
構えとは、起こり得るすべての状況に対応できる準備である。
──ブルース・リー
〈日常と生活〉
- 〔客〕
客は雨のようなものだ。ときどきやってくるのはいいが、来続けるのは困る。
──『ユダヤ格言集』 - 〔化粧〕
(化粧には)虚構によって現実を乗り切ろうとするエネルギーが感じられます。そしてまた化粧はゲームでもあります。
──寺山修司 - 〔下駄〕
下駄は履物というよりも、携帯用の廊下である。鼻緒の一点で、廊下を足にぶら下げて歩く。
──赤瀬川原平 - 〔酒〕
酒ハ酔ウタメノモノデス。ホカニ功徳ハアリマセヌ。
──太宰治 - 〔バッカス〕
(バッカスとは)古代の人びとが、酒に酔っぱらう口実として、便宜上、作り出した神さま。
──ビアス - 〔制服〕
人はその制服のとおりの人間になる。
──ナポレオン - 〔茶の湯〕
茶の湯とはただ湯をわかし茶を点(た)ててのむばかりなることと知るべし。
──千利休 - 〔茶の湯〕
茶の湯は、茶、花卉、絵画等を主題に仕組まれた即興劇であった。
──岡倉天心 - 〔鼻〕
人間の顔の最前哨地点。(略)われわれは、他人の事に鼻を突っ込む時ほど、大きな満足を覚えることはないと、昔から誰もが気づいているのだ。
──ビアス - 〔花〕
すべての花は自然界に咲く魂だ。
──ネルヴァル - 〔釣り〕
釣りは、運、勘、根である。つまり、人生だな。
──開高健 - 〔好み〕
好みは千の嫌悪から成る。
──ポール・ヴァレリー - 〔ファッション〕
ファッションとはスタイルに活気を与えるビタミンのようなもの。適量とれば刺激になるが、とりすぎれば害になる。
──イヴ・サン=ローラン - 〔いき〕
(いきとは)垢抜して(諦)、張のある(意気地)、色っぽさ(媚態)。
──九鬼周造 - 〔ユーモア〕
ユーモアは、世界に対抗するもう一つの武器。
──メル・ブルックス - 〔苦労人〕
苦労人というのは、ややこしい苦境を優雅に切り抜ける人のことである。
──モーム - 〔ヒーロー〕
ヒーローが普通の人間より勇敢なわけではない。周りよりも五分だけ長く勇敢でいられるだけなのだ。
──ロナルド・レーガン - 〔ふるさと〕
ふるさとは遠きにありて思うもの そして悲しくうたうもの
──室生犀星 - 〔アマチュア〕
趣味を技量と思い誤り、自分の野心を自分の能力と混同している世間の厄介者。
──ビアス - 〔職業〕
職業というものは要するに人のためにするものだということ(略)。人のためにする結果が己のためになるのだから、元はどうしても他人本位である。
──夏目漱石 - 〔プロ〕
基本的にプロというのは、ミスをしてはいけないんですよ。
──王貞治 - 〔サッカー〕
サッカーは無宗教家(応援しない人、信じない人)がいない唯一の宗教だ。
──メッシ - 〔バッター〕
自分が打てるボールを選択して振る。シンプルですけど、なかなかできないことを一年間継続するのがバッターなので。
──大谷翔平 - 〔将棋〕
(将棋とは)指すごとに新しい発見を与えてくれるものなのかなと思います。
──藤井聡太 - 〔アイデア〕
アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないのです。
──J・W・ヤング - 〔企業の目的〕
企業の目的は、顧客を創造することである。
──ドラッカー - 〔ルーティン化〕
ルーティン化とは、熟練していなくて判断力のない人でも天才を必要とする仕事を処理できるようにすることである。
──ドラッカー - 〔ドラえもん〕
ドラえもんは哀しいかな現実にはいないが、実際には、様々な人が助けてくれたり、そういう状況があったりする。だから、ある意味、ドラえもんはどこにでもいる。そういっていいと思う。
──藤子・F・不二雄
齋藤孝著
定義
「定義は、究極の要約力だ!」何かを言い切ることで、ものの見方が豊かになる。著者である齋藤先生が「これは!」と思う286個を厳選し、解説を加えた一冊。
352頁/定価: 2200円(10%税込)/ISBN: 978-4-480-81692-4