五分に一回キュンとしたり、じーんとしたり。
やさしさに包まれる、魔法のような短篇、十一話。
ISBN:978-4-480-42829-5 定価:本体600円+税 ちくま文庫
死んだあなたに、「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんか。あるなら、なにかモノになって戻ることができますよ、と。そうして母は息子のロージンバッグに、娘は母の補聴器に、夫は妻の日記になった……。
たくさんの方から感動の声を寄せられた短篇小説集『とりつくしま』をモチーフに、「モノになって大切な人のそばに戻ってきても、そっと見守ることしかできない切なさ。それを短歌というかたちで表現してみませんか」と呼びかけたところ、たくさんの応募がありました。
応募いただきました皆様、本当にありがとうございました。
この度、寄せられた歌の中から東直子さんに優秀作品を選出していただきましたので発表いたします。
「総評」
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この身体一枚一枚破る度胸の痛みを薄れさせてね
(日めくりカレンダー)佐川菜々美
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なにもかもあたらしくする朝の水むねいっぱいにひかりをためて
(コップ)杜崎アオ
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日曜のお風呂あがりにやわらかくなったあなたの一部を食べる
(爪切り)本多響乃
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「行ってらっしゃい」「おかえりなさい」を言うようにそれぞれの手を握り返した
(ドアノブ)永山雪
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一瞬でいいんだ君の目に映る世界を見せて雫のぼくに
(目薬)猫田馨
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歌集読む君を見るのが好きですよ読み終わったらそっと触れてね
(栞)安西大樹
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繊細なあなたのゆびに支配され右へ左へそしてくちびる
(お箸)東こころ
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白いのが増えておじさんになってもいい子、いい子と撫でていたくて
(櫛)織紙千鶴
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時刻む左手首の僕よりもわずかに速い君の心臓
(腕時計)いまだながず
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まるく小さくつやめきながら見上げては君のからだの成分はこぶ
(スプーン)市岡和恵
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車椅子まさか使っていようとは ばあさんわしと歩かないかい
(杖)三葉かなえ