『ちくま評論選 二訂版』編者の言葉

この本は、『ちくま評論選』の二訂版である。掲載評論を部分的に入れ替え、多少の訂正を施した。二〇〇七年にこの本の初版が作られて以来、世界の様相は大きく変わったが、編集意図には変わりはない。想定している読者は、自分で考えようとする強い意志と、他者の苦しみに共感しうる柔らかな心をもつ若いひとびと、すなわち、あなたである。

第一部 「私」の地平線 「私探し」に走る前に、この「私」の置かれた状況に、しっかり目をすえる必要があるだろう。そのための基本を論じた評論で構成した。

第二部 「知」という冒険 世界を把握する「知」のはたらきでは、視点の取りようによって、世界が新たな様相で見えてくる。視点の鮮やかさで際立つ評論を収める。

第三部 「過去」と「現在」  人間の思考は、過去と現在とを往還する。そのことで、時間軸の両端に新たな意味を発見していくのである。科学、文学、歴史を、広い歴史的展望から論じた評論を置いた。

第四部 言語と経験 いかなる状況におかれても、人間はことばから出発するしかない。ことばの本質と、その交わる時代の経験を論じた評論で構成した。

第五部 明日の世界へ 生命体としての人間の死を、ゆっくりと、しかし確実に招くような事態が、現代社会の根底を揺るがせている。どのような危機を克服して、明日の世界を作りだすか。若い人々が直面する課題である。

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