『山月記』が虎への変身を通して実存の不安と恐怖を持つ人間を描いたように、『変身』では、虫への変身を通して家族とのつながりを求める屈折した人間を描いています。どちらも近代以後の人間のある典型だといえます。二つの作品に補助線を引く中で、より互いの作品の特徴が明らかになっていくように思います。