はじめに
テレビの発明家・萩本欽一/萩本欽一がテレビに起こした革命/いまなぜ、萩本欽一なのか/本書の構成
第一章 コメディアンになる――気弱な少年の選択
1 父親の不在、母親の?――幼少期の萩本家
三男なのに「欽一」となった訳/東京・下町生まれの焼け跡世代/波乱万丈の人生だった実業家の父親・団治/教育熱心な母親・トミのついた?/欽一少年、「よいしょ」を覚える
2 勤労少年・萩本欽一の人生観
中学で覚えた「ウケる快感」/「お金持ちになりたい!」という決心/アルバイトの日々だった高校時代に学んだこと
3 なぜ、落語家でもなく漫才師でもなくコメディアンを目指したか
チャップリンから得た救い/浅草・東洋劇場でコメディアンに/テレビ時代が始まるなかで
第二章 枠からはみ出す――コント55号が大成功した理由
1 辞めることも考えた浅草新人時代――萩本欽一を救ったもの
たった三カ月での"引退危機"/萩本家「解散」とその後/ひとりの女性との運命的出会い/二二歳で劇団を立ち上げる/テレビ新人時代の一九回NG事件
2 コントの常識を変えたコント55号――「フリ」と「コナシ」の関係性
最初は最悪だった坂上二郎の印象/熱海の日々、そしてコント55号の結成/コント「机」/コント55号の大ブレーク――常田久仁子との出会い/枠からはみ出した欽ちゃん――コント55号はどこが革新的だったのか
3 「お笑いの地位を上げたい」――職業としてのコメディアン
"欽ちゃん人気"の新しさ――お笑いの地位向上の原点に/先輩・東八郎の教え/日本テレビ・井原高忠とのあいだに生まれた信頼関係/?低俗番組?批判のなかでの苦悩/コント55号人気の陰り、アメリカ行きの構想/新たな挑戦へ
第三章 「欽ちゃん」の革命――「視聴率一〇〇%男」という生きかた
1 テレビ司会者・萩本欽一の軌跡
最初は断った司会の仕事/初司会の『スター誕生!』で生まれた「ばんざーい、なしよ」/「素人の瞬発力的な笑いにはかなわない」/『24時間テレビ』の画期的成功/「欽ちゃん」の笑いが有していた包容力/克服したあがり症――長野オリンピック閉会式で
2 素人を主役に――「欽ちゃん」が発見した「テレビの笑い」
「パジャマ党」誕生/「石の上にも五年」/『欽ちゃんのドンとやってみよう!』は、テレビでやるラジオだった/素人が主役になったバラエティ『欽ドン!』/欽ちゃんに笑いの才能を見出された歌手、前川清と中原理恵/『欽ドン!』対『全員集合』――視聴率のための戦略
3 「視聴率一〇〇%男」萩本欽一のテレビ論
「ドラマ」のかたちをとったバラエティ?――『欽ちゃんのどこまでやるの!』/「欽ちゃん番組」と素人路線の確立――『欽どこ』『良い子・悪い子・普通の子』『仮装大賞』/「視聴率一〇〇%男」の誕生/テレビにジャンルはない――「欽ちゃん」がテレビに起こした革命/久米宏が気づいたすごさ
第四章 プロデューサーの眼――タレント、アイドル、野球チーム
1 「欽ちゃんファミリー」の誕生
「大将」というもうひとつの呼び名/車だん吉と斉藤清六――師弟関係のなかで/「クロ子とグレ子」、小堺一機と関根勤の「コサキン」コンビ登場/「欽ちゃんファミリー」の女性たち/柳葉敏郎、勝俣州和、Take2ら若手男性タレントも/「聞いたらおしまい」の意味/木村拓哉も”合格”だった
2 アイドルプロデューサーとしての成功
つんく♂や秋元康よりも早くアイドルプロデュースで成功/イモ欽トリオ「ハイスクールララバイ」の記録的ヒット/相乗効果をもたらす"番組優先主義"/世の中を惹きつけた「新童謡」――わらべ「めだかの兄妹」/萩本欽一はテレビにとっての歌の力を知っていた/「やさしい笑い」の教え
3 野球をエンターテインメントに――茨城ゴールデンゴールズの挑戦
「欽督」になった萩本欽一/なぜ野球だったのか/選手にコメディアン流の「ため」と「間」を伝授/選手の「運」を見極める/「昭和」をプロデュースした萩本欽一
第五章 焼け跡世代、平成、令和を生きる――七三歳の大学生からユーチューバーへ
1 仏教学部を選んだわけ――笑いと仏教の実は深い関係
六〇代は「無謀なことをやるオッサン」になる/『24時間テレビ』マラソンへの挑戦/七三歳の大学受験/「同級生」になった若者たちとの日々/「粋な言葉」の大切さ/仏教と笑い、そして「いつも民衆と一緒にいる」ということ/「人生は勝つか逃げるか」
2 八〇歳でユーチューバーに――焼け跡世代、インターネットと出会う
浅草軽演劇をテレビで再興する/『欽ちゃん!30%番組をもう一度作りましょう(仮)』/八〇歳のユーチューバー/ユーチューバーになって気づいたこと/「焼け跡世代」がいち早くネットになじめた訳
終章 萩本欽一の時代――遠回りの美学
「昭和」とはいつのことか/コメディアンという仕事と戦後的価値観/萩本欽一は笑いを民主化したパイオニア/「ダメなときほど運がたまっている」/遠回りの美学/母校での出会い/
あとがき
参考資料
萩本欽一年譜