森有正
( もり・ありまさ )1911-76年。東京大学文学部仏文科卒業。東京大学助教授を経て、50年渡仏。のちパリに居を構え、26年間、ソルボンヌ、国立東洋語学校などで、日本語や日本の文学・思想を講じた。深い哲学的省察に満ちたその“思想エッセー”は、西洋思想を学ぶ者のみならず、自己に誠実であろうとする多くの読者に迎えられた。『遙かなノートル・ダム』『バビロンの流れのほとりにて』『旅の空の下で』等の代表作の多くは『森有正エッセー集成』全5巻(ちくま学芸文庫)に収録されている。
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ドストエフスキーの文学は、いまなお私たちの魂を揺さぶってやまない。長大な作品の最初のページを開いた瞬間から我知らず引き込まれてゆくのはなぜか。「この本を出したのは、思想的な牽引力が私をドストエーフスキーに引き付けたからであった。思想的とは、人間の現実に直入して、その中核を把握する力強さについてのことである」。著者は『罪と罰』に罪悪感を、『悪霊』に絶望と死を、『カラマーゾフの兄弟』に自由と愛を、『白痴』に善を考察し、『死の家の記録』に「人間」を発見する。深い洞察に導かれた「読み」は、その作品世界を味わうための最良のガイドとなっている。
1 ドストエーフスキーの罪悪観―『罪と罰』の一考察
2 ドストエーフスキーにおける絶望と死―『悪霊』の一考察
3 スタヴローギンの精神像
4 コーリャ・クラソートキン―『カラマーゾフの兄弟』の中の一挿話
5 ドストエーフスキーにおける「自由」の一考察―『大審問官』の場合
6 『ロシアの僧侶』をめぐって―ドストエーフスキーにおける愛
7 ドストエーフスキーの『罪と罰』について
8 ドストエーフスキーにおける神と人
9 ドストエーフスキーにおける「善」について―『白痴』をめぐって
10 『人間』の発見―『死の家の記録』をめぐって
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