安野光雅
( あんの・みつまさ )安野 光雅(あんの・みつまさ):1926年島根県津和野生まれ。画家・絵本作家として、国際アンデルセン賞、ケイト・グリーナウェイ賞、紫綬褒章など多数受賞し、世界的に高い評価を得ている。主な著作に『ふしぎなえ』『ABCの本』『繪本平家物語』『繪本三國志』『片想い百人一首』などがある。2020年、逝去。
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百人一首の盛んな津和野に生まれ育った著者の、情感あふれる本歌取り百首とそれにまつわるエッセイ。上の句が「問い」なら、下の句は「答え」。現代の「問い」に対して、王朝の人々に「答え」をもらう本歌取りは、いつも一方通行の「片想い」だが、時間を越えて心が通じ合う楽しさがある。いつのまにか不思議と本歌にもなじみ、あなたも百人一首の達人に。アンノ流百人一首の楽しみ方。
歌かなし終戦の夜は歩哨にてわがころもでは露にぬれつつ
秋の田のかりほの庵のとまをあらみわがころもでは露にぬれつつ
小春日に乙女の色のひるがへりころもほすてふ天のかぐ山
春すぎて夏来にけらし白妙のころもほすてふ天のかぐ山
旅の宿窓うつ氷雨行く秋のながながし夜をひとりかも寝む
あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
伏流の神酒たてまつる大観の富士の高嶺に雪は降りつつ
田子の浦に打出てみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
村祭りはじめて紅をさす子らの声聞く時ぞ秋はかなしき
奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき〔ほか〕
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