森雅秀
( もり・まさひで )森 雅秀(もり・まさひで):1962年、滋賀県生まれ。名古屋大学文学部哲学科卒、同博士課程中途退学。ロンドン大学大学院修了、同博士号取得。高野山大学文学部助教授、金沢大学文学部助教授等を経て、現在、金沢大学人間社会研究域教授。専門、仏教学、比較文化学。著書に『チベットの仏教美術とマンダラ』『インド密教の儀礼世界』『密教美術の図像学』『チベット密教仏図典』『仏のイメージを読む』『マンダラの新しい見方』『エロスとグロテスクの仏教美術』などがある。
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インド・チベット密教や日本密教の世界観が凝縮されたマンダラ。日本には主に掛図の形で伝えられたため、神秘的な美術品として鑑賞されがちだが、本来それは、宗教儀礼のなかで具体的に用いられてきたものである。さらに、ヨーガ・瞑想における「悟りのための手段」としてだけでなく、秘儀を授ける入門儀礼「灌頂(かんじょう)」や本尊を決める「投華得仏(とうけとくぶつ)」など、僧院の集団儀式のなかで使われるという特徴がある。どのように制作され、どのように用いられるのか。数々のマンダラ作品やサンスクリット文献を軸に、密教儀礼の核心に迫る。仏教図像学の第一人者による貴重な書。
第1章 マンダラとは何か
聖地高野山/インド密教とマンダラ/マンダラとは何か/マンダラ研究の歴史/観想上のマンダラと儀礼のためのマンダラ/密教儀礼とマンダラ
第2章 インドの宗教儀礼
儀礼―反復される行為/ヴェーダという儀礼体系/ヒンドゥー儀礼への変容/インドの宗教儀礼の一般的特徴/ヴェーダの祭式/ヒンドゥー儀礼プージャー/プージャーの形成 /密教儀礼に見られるユニット構造/密教の瞑想法
第3章 マンダラをつくる
マンダラ―聖なる空間/マンダラを描く土地の選定と浄化/土地を支配する龍ヴァーストゥナーガ/経典内容の再現/結界法/大地の女神との対話/水瓶の準備/寺院建築儀礼との対応
第4章 マンダラの図像学
子供の絵とマンダラ/儀礼のためのマンダラ/マンダラの基本線/楼閣の構造/マンダラの装飾/楼閣内陣のシンボリズム/彩色のプロセス/複数の視点と観想のプロセス
第5章 聖別の儀礼
水のイニシエーション/『大日経』のアビシェーカ/『金剛頂経』のアビシェーカ/後期密教におけるアビシェーカの展開/プラティシュターという儀礼/プラティシュターとアビシェーカの関係/ヴェーダ文献の国王即位儀礼/ヒンドゥー儀礼としてのプラティシュター/聖別儀礼の形成/聖別の儀礼とマンダラ
第6章 拡大するマンダラ
マンダラを壊す/マンダラとストゥーパ(仏塔)/寺院へのマンダラの投影/ペンコル・チューデの仏塔/空間を体験する
文庫版自著解説 視点の発見