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単行本

さようなら、オレンジ

異郷で言葉が伝わること―― それは生きる術を獲得すること。 尊厳を取り戻すこと。

自分が生きる道をつかみたい…。故国を遠く離れ、子供を抱えて暮らす女性たちは、たがいに支え合いながら、各々の人生を切り開いていく。第29回太宰治賞受賞作。

大江健三郎賞(第八回)/太宰治賞(第二九回)

定価

1,430

(10%税込)
ISBN

978-4-480-80448-8

Cコード

0093

整理番号

2013/08/28

判型

四六判

ページ数

176

解説

内容紹介

オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。第29回太宰治賞受賞作。

著作者プロフィール

岩城けい

( いわき・けい )

大阪生まれ。大学卒業後、単身渡豪。社内業務翻訳業経験ののち、結婚。在豪二十年。『さようなら、オレンジ』で2013年、第29回太宰治賞を受賞しデビュー。同作で、第150回芥川賞候補・第8回大江健三郎賞受賞・2014年本屋大賞4位。他に著書『Masato』(集英社、2015年)がある。

この本への感想

私は、読書感想文を書くためにこの本を一度読んでみたいと思い、このさようなら、オレンジを手に取りました。今までは書くのにすごく苦労していたけど、今回は苦労せずに書く事ができそうです。このさようなら、オレンジは言葉が通じるとはどういう事なのか、言葉の大切さ等を目的として書かれている本なので、上手く書けそうです。切ない場面もあったけど、もういちどまた機会があれば読んでみたいです!!

どーなつ♪

さん
update: 2015/08/21
海外に30年以上住んでいます。作品の意図が手に取るようにわかります。この作品は、異邦人の叫びや孤独、希望などを通し、生きることを原点にたって見つめさせてくれるようです。アイデンティティをもつ意味、持たない選択を異国に住んで過去をふりかえることで教えてくれます。母国語とかかわりもまさに作品の通りだと思います。


手紙の手法も優れた作品の構成の仕方だと思います。作品にひきずりこまれて読みながら、なおかつ読後に余韻とともに考えさせられる優れた作品でした。

キュネゴンド

さん
update: 2015/03/23
~ぜひこの単行本のスタイルで、ブンガクの愉しみを~
 オーストラリアの片田舎、難民、日本人?つかみどころのない設定、確かにつかみどころのない境遇に陥っている2人の視点が、異なるフォーマットでつづられる。ごつごつと壁に当たりながら進むそれぞれの世界が少しずつ交錯し合い、読み手もそれぞれの章をごつごつと読み下しながら像を結んでいく。このごつごつ感の共有は、単行本のこのスタイルならではだろう。電子書籍のテキストとか、映像では味わいにくいと思われる。文学作品として作家の力量を感じる一方、新人ながらここまで世に出た書籍としての総合的な魅力は、出版社の担当者の思い入れと手腕によるところが大きいのではないだろうか。

 主人公の二人の女性が向かい合わう困難は、異郷という環境だけではなく家庭のなかにもあり、ことごとく役に立たない、むしろマイナスの存在でしかない男たちだ。この裏モチーフは全体を貫いており、男性でポジティブに描かれているのは”変わり者”の監督、文字の読めない隣人、少年など、男性の世界では主流と見なされない人たちばかりだ。ある意味春樹的世界の女性観への静かな返礼にも感じられ、そうした意味からも読者を増やしてもらたいところだ。

 最後に一つ(私の読み落としかもしれないが)、ハリネズミの手紙のあて先の先生は男性なのか女性なのか。読み手により違いそうで読後も興味がつきない。

白藤 努

さん
update: 2014/04/29
読み書きを学び、言葉を得ることの意味は人によって異なり、重層的な意味をなす。そんな自明な真実にジワーッと感動する。アフリカ難民のサリマと、サリマとしてのナキチを描くハリネズミである私を同時に書くことによって、言葉を得る困難が人生の困難であることを教えてくれるからだろうか。

愚銀

さん
update: 2014/04/15
友達に本の紹介をメールで送ろうと、
惹きつけられたところを付箋をつけていったら、

付箋だらけになってしまいました。
アフリカ難民サリマの物語のところは
ひとつひとつ、眼が離せなかった。
生きる姿に、登場人物の監督と同じように
惹かれてしまいました。
言葉とはかくなるものか、
母語とは、も日本人女性の手紙のところで
はっとさせられました。
今年の私の読書の収穫ベストワン。

おこちゃん

さん
update: 2013/11/12
小説を読んで涙したのは、おそらく少女時代に「赤毛のアン」を読んで以来だ。
その涙も、「かわいそう」とか「怖い1」とかいうものではない。胸の奥から溢れてくる感動によるもので、それは、最近よくあるマンガの焼き直しのような小説やドラマ、難解な「文学」、あるいは赤裸裸な性描写等エキセントリックな内容の小説にある「目立とう精神」がない誠実な作品であるからこそです。

山口紹子

さん
update: 2013/10/07

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