養老孟司 解剖学者

 学芸文庫を全部読んだかどうか、リストで確かめてみたら、とんでもなかった。読んでないほうが多い。とくに翻訳モノがいけなかった。おそらくそれはちくま学芸文庫ができる前に、つまり若いころにその種の本を読む癖があって、だんだん読まなくなったからに違いない。デリダとかバタイユとかベンヤミンとか、昔風にいえば読まなければならない本を読んでいないのである。
 逆にまだ当分の間、読む本には不自由しないなあと思った。ギボンとかニーチェのように、大きな著作ないし著作集もちくま学芸文庫に入っているから、読み出したらそれだけでも時間がかかる。
 日本語でこれだけいろいろなものが読めるというのは、じつは驚くべきことではないのだろうか。世界の国で、これほど世界中のいろいろな本が読める国というのは、ほかにあるのだろうか。そんなことが、ちょっと知りたくなった。

『ちくま学芸文庫 創刊15周年』TOPへ

t>