太宰治賞
第29回

2013/07/17

第29回太宰治賞贈呈式が行われました

第29回太宰治賞贈呈式は2013年6月17日、東京會舘にて行われ、

受賞者には、記念品及び賞金100万円が贈られました。







【贈呈式レポート】

 617日(月)、東京丸の内の東京會舘で第29回太宰治賞(筑摩書房・三鷹市共同主催)の贈呈式が行なわれました。

 三鷹市の清原慶子市長がまず主催者挨拶を行ないました。共同主催になって
15回、ようやく中断前に筑摩書房主催で行なった14回を一つ上回った、それをとても誇りに思うとまず述べました。


 そして今回の受賞作を書かれたKSイワキさんが、20年オーストラリアで暮らしていることを紹介し、日本語が通じない場所での異文化・多文化の体験が、この作品の背景にあるのではないか。自身も、40代に3か月アメリカに研究員として過ごしたことがあり、まったく日本語が通じない場所で言語ついていろいろ考えさせられたことがある。この作品を通して、みなさんが何を感じられるか楽しみであると述べました。

 つづいて筑摩書房の熊沢敏之社長が登壇。やはり共同主催になって15回、人の成長にたとえればひとりで成長し伴侶を得て成熟してゆく、太宰賞も三鷹市という伴侶を得てそういう時期にようやく入ったのだと感慨深い、とまず述べました。そして今KSイワキさんの「受賞の言葉」に、異国の地で暮らし「日本語がやせ細っていく」という胸に迫る一節があったが、これを読んで、アゴタ・クリストフの自伝にあった「フランス語が私の母語をじわじわ殺しつつある」という文章を思い出した。アゴタ・クリストフに通じる感性をもつKSイワキさんの今後のご活躍を期待したいと締めくくりました。

 そして、選考委員を代表して三浦しをん氏による、選考過程と選評の発表がありました。

 今回の最終候補作はどれもレベルが高く読ませるものだったが、選考過程で徐々に明らかになったのは、
4人の選考委員全員がこのKSイワキさんの「さようなら、オレンジ」を推そうと心に決めて選考の場に臨んでいるということだった。読んでいて何度も心を揺さぶられこみ上げるものがあった。テクニック的にもすばらしく、私はそれゆえに少し気になる点もあったのだが、そのことを考え合わせても、この小説はすぐれた、人間の真実に文章で深く踏み入った作品であるのは間違いないと確信している。なので、ぜひ広くみなさんに読んでいただきたいと思っている。多くの方の心を打つのは間違いないと思う、と述べました。

 
 表彰状、正賞および副賞授与のあとに、KSイワキ氏が受賞の挨拶をしました。


 歴史ある賞をいただきほんとうにうれしい。書くことは自分が望んだことだったが、孤独との闘いだった。今後は太宰治先生に見守っていただき、少しでも良い作品を書けるよう努力してゆきたい、と述べました。


 そして、津島園子さんより受賞者へ花束贈呈が行なわれ、加藤典洋氏による乾杯の音頭で、パーティへと移りました。


*選評と受賞作、それに最終候補作品は『太宰治賞2013にて読むことが出来ます。

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