2023年5月11日(木)、第39回太宰治賞(筑摩書房・三鷹市共同主催)の最終選考が実施され、選考委員四氏(荒川洋治、奥泉光、中島京子、津村記久子)による厳正な選考の結果、以下のように受賞作が決定しましたので、お知らせいたします。
第39回太宰治賞受賞作
「自分以外全員他人」西村 亨
【あらすじ】
あと1年半、あと1年半待てば俺は自殺できる――。マッサージ業界でフリーランスとして働く柳田譲。不安定な日々を過ごし、生きる支えも希望もなく、45歳が限界だと思っていた男は自らに死亡保険をかけ、自殺でも保険金が下りるようになる日を待っていた。人とうまく関係を築くことができず、母とも母の再婚相手とも分かり合うことはないまま家を出て、職場の同僚や客ともおおよそ心地の良い会話はできない。鬱で退職した元同僚の真似をして始めたサイクリングだけが唯一の心のよりどころだったが、逆走する自転車や幅寄せしてくる車を見かけるたびに腹を立て、気が狂いそうになるのを必死で抑える日々。極めつけは入居しているマンションの駐輪場での置き場所トラブル。自分の魂そのものになった自転車を屋根付きの駐輪場に止めたい、それだけだったのに、自分はなにも悪いことをしていないはずなのに。日常が怒りに染まっていく中年の破滅の物語。
【著者略歴】
西村亨(にしむら・りょう)
鹿児島県出身、東京都在住。
1977年生まれ、46歳。
なお、贈呈式は6月16日(金)午後6時から如水会館で開催され、受賞者には記念品および賞金100万円が当日贈呈されます。
(新型コロナウイルス感染拡大の状況によって、贈呈式の開催を延期・中止する可能性もあります)