文章に即して古典を読む
『竹取物語』冒頭を読む(その1)
●『竹取物語』冒頭の二つの係り結び今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむ言ひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。 『竹取物語』は、このようにはじまる。この冒頭部分は、古文の入門教材の位置に置かれていることが多い。ここで「名をば、さぬきの造となむ言ひける。」「その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。」の二つの係り結びを教師は説明し、教えていく。「なむ」は、強調の意味をもつ係助詞で、これがあると連体形で結ぶ、と教える。 ところで、なぜここに係り結びがあるのか。なぜ「名をば、さぬきの造と言ひけり。」「その竹の中に、もと光る竹一筋ありけり。」となっていないのか。このことは、これまでほとんど問題にされてこなかったのではないか。教師用指導書も、係り結びには触れていても、なぜここが係り結びになっているのか、ということは全く問題としていない。 現代文を読む場合、文章の中に強調の表現があるならば、そこがなぜ強調されているのか、また強調されていることの効果を考えようとするだろう。係り結びは、古文独自の用法である。だから係り結びを教えればよいというのでは、古文を読むおもしろさは半減してしまうのではないか。
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