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筑摩選書

エメ・セゼール

——「黒人(ネグリチュード)」の発明

共和国の不合理を撃ち続けた詩人 初の評伝

ネグリチュード運動を牽引し、植民地主義を批判した現代フランス領カリブにおける最重要知識人セゼール。その知的全貌を明らかにする日本における初めての評伝。

定価

2,310

(10%税込)
ISBN

978-4-480-01834-2

Cコード

0331

整理番号

0316

2025/10/15

判型

四六判

ページ数

352

解説

内容紹介

現代カリブの最重要知識人セゼールは、『帰郷ノート』(1947)で「ニグロ」の語から「ネグリチュード」概念を創出し、植民地主義を批判。一躍世界的な詩人としての評価を確立した。政治家としても半世紀にわたり市長と国会議員を兼任し、詩と政治の2つの営みによってマルティニークがフランスの「共和国」理念に基づく「都市(シテ)」となることを目指した。セゼールを、彼と共振した人々の歩みとともに、公文書資料やセゼール自身へのインタビューをもとに描き出す、日本で初めての画期的評伝。

目次

はじめに――エメ・セゼールとは

序章 複数言語を生きること
1 言語から見たカリブ海
2 クレオール語

第1章 黒人市長の誕生
1 パリの名門校に記念碑
2 マルティニークにおける幼少時代からパリ時代(1913~1939)
3 帰郷した詩人
4 フランス領カリブにおける社会構造
5 詩人が政治家になるとき

第2章 アメリカとアフリカの結節点――セゼールの詩とニグロの問いかけ
1 文学活動、「ニグロ」の声に形
2 足枷を解かれた文体
3 ニグロからネグリチュードへ
4 発展するネグリチュード文学運動
5 海外フランスの成り立ちとマルティニーク小史

第3章 政治家セゼールへ
1 若き政治家の課題
2 反体制、あるいは植民地主義批判
3 植民地神話解体――『植民地主義論』の出版
4 「我々自身であるときが来た」――共産党からの離脱
5 マルティニーク進歩党の結成
6 職業政治家、あるいはネイションとしての自治を求める試み

第4章 演劇と脱植民地化
1 詩集から戯曲へ
2 『クリストフ王の悲劇』
3 『コンゴのある季節』
4 『あるテンペスト』
5 ポストコロニアル
6 セゼールはなぜフランス語で書いたのか

第5章 社会党政権下でのマルティニーク
1 マルティニーク進歩党の「自治」構想と文化活動
2 ミッテランの大統領選出
3 分権化法案と右派の抵抗
4 分権化の成果と「要求するセゼール」
5 EC統合の進行と海外県
6 ネグリチュード演説
7 ミッテラン第二大統領期(1988~1995)
8 詩人=政治家セゼールの軌跡
9 周辺的リアリズム――21世紀のマルティニークでのレファレンダム

第6章 トビラ法の成立――人道に対する罪としての黒人奴隷制
1 忘れようとしてきた刻印
2 「人道に対する罪」と黒人奴隷制?
3 法制化への転換点――1998年の奴隷制廃止記念日
4 議会におけるトビラ法の成立
5 トビラ法の実施と海外県出身者(ドミアン)

第7章 庶民から見たアンティルとフランス本土
1 フランス本土への組織的移住政策
2 本土のアンティル人コミュニティ
3 変わる意識

第8章 21世紀に響くセゼールのメッセージ
1 文化遺産になった「詩」
2 賠償をめぐって

第9章 強力な友愛――共和制とセゼール
1 1946年――海外県法案を提案するセゼール
2 セゼールの自由・平等・友愛――2006年インタビュー
3 セゼールの政治思想――周辺からの共和主義

おわりに
付 セゼールへのインタビュー
あとがき
参考文献
エメ・セゼール関連年表
インタビュー・面会者リスト
人名索引

著作者プロフィール

尾立要子

( おりゅう・ようこ )

尾立 要子(おりゅう・ようこ):1965年生まれ。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業。博報堂勤務の後、神戸大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。博士(京都女子大学)。大阪公立大学客員研究員を経て、現在尚美学園大学総合政策学部非常勤教員。専攻はフランスの海外領土政策。著書『周辺からの共和主義――「天国に一番近い島」の現在』(大阪公立大学出版会、2024年)など。

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