まえがき
序章 問いなおされる自由民主主義
自由民主主義の苦境/普遍的な原理か?/本書の課題と方法/グローバル・ヒストリー
Ⅰ 形成
第1章 すべては国家から始まった
1 なぜ近代西欧から始めるのか
ヨーロッパの固有性/主権という概念
2 中世的世界の解体
中世ヨーロッパの特徴/トマス・アクィナスの思想/宗教改革
3 ホッブズの主権論
ピューリタン革命とホッブズ/機械としての人間/自然状態とホッブズ問題/主権の設立/絶対王政との関係
4 現代と主権論
シュミットの主権論/現代における主権
第2章 自由主義の誕生──主権をいかに統制するか①
1 市場という秩序
自由主義の成立条件/市場の思想史的意味
2 ロックにおける国家と社会
名誉革命とロック/ロックの人間論/自然状態/政治社会の設立/法の支配と抵抗権/ロックの思想的影響
3 スミスにおける国家と市場
富と徳──一八世紀思想の文脈/商業社会と国家/市場の道徳的基礎──同感の原理
4 自由主義の成立条件
なぜ近代ヨーロッパで自由主義が成立したか/自由主義と植民地主義
第3章 民主主義の萌芽――主権をいかに統制するか②
1 公共とは何か
正統性の源泉としての人民/公共という言葉
2 ルソーの一般意志論
独学者ルソー/自然状態からの堕落/文明社会の悲惨/一般意志の形成/一般意志にもとづく共和国/覚醒のシナリオ
3 カントの共和国論
学究の徒カント/人間の普遍的尊厳/目的の国としての共和国/覚醒のシナリオ──理性の公共的使用
4 自由民主主義の誕生
情念の力か、理性の力か/自由主義と民主主義の結合
Ⅱ 危機と再生
第4章 自由主義への批判
1 一九世紀ヨーロッパの文脈
フランス革命の衝撃/工業化と都市化
2 ヘーゲルにおける市民社会と国家
ヘーゲルの思想的課題/法・道徳・倫理/家族と市民社会/自由の実現としての国家/民族と世界史
3 マルクスにおける資本主義と国家
革命家マルクス/ヘーゲルへの批判/上部構造としての国家/資本主義の矛盾/マルクス以後の展開/二一世紀の資本主義
第5章 民主主義への懐疑
1 共和政と民主政
民主政=衆愚政治という見方/一八世紀以降の変化
2 民主的専政──トクヴィルの民主主義論①
貴族の末裔トクヴィル/民主主義の再定義/多数者の暴政/民主的専政
3 民主的専政を抑止する条件──トクヴィルの民主主義論②
地方自治と自発的結社/言論の自由
4 大衆民主主義とトクヴィル
第6章 全体主義という破局
1 破局の時代
二つの世界大戦/全体主義という言葉
2 全体主義の起源
アレントの生涯/前史としての帝国主義/イデオロギーとテロル/大衆のメンタリティ
3 公共世界の喪失
三つの行為類型/公的領域の意味/近代世界と大衆の登場
4 アレントと現代
第7章 妥協の時代
1 自由民主主義の「普遍化」
西側諸国の体制イデオロギー/思想的な勝利か
2 自由主義の修正
戦間期の自由主義批判/イギリスのニュー・リベラリズム/ケインズとベヴァリッジ
3 民主主義の再定義
シュミットの議会主義論/シュンペーターの民主主義論
4 第二次世界大戦後の妥協
自由の意味変容/代表制民主主義への合意
Ⅲ 分裂
第8章 新自由主義──リベラリズムの再構成①
1 一九七〇年代の転換
妥協から分裂へ/グローバル化と産業構造の変化
2 新自由主義の登場
ハイエク『隷従への道』/フリードマンの自由論/政府の役割――競争的市場の維持
3 自由の基底性
自由と無知/自生的秩序としての市場/不平等の是正は必要か/抽象的なルールによる権力の制約
4 新自由主義と現代
新自由主義の広がり/歴史認識との関係
第9章 ロールズの正義論──リベラリズムの再構成②
1 ロールズの登場
リベラリズムの哲学的基礎/規範理論の復権
2 正義の二原理
公正としての正義/原初状態という仮定/正義の導出/格差原理とマキシミン・ルール
3 正義論の射程
最大多数の最大幸福とロールズ/結果の平等を目指すべきか/機会均等とは何か/才能の格差は是正すべきか/財産所有の民主制/福祉国家との違い──「事前」の分配
4 正義論以降の展開
現代政治の対立軸/センのケイパビリティ・アプローチ/運の平等をめぐる論争
第10章 普遍性と差異──アイデンティティをめぐる対立
1 文化的対立の浮上
文化的リベラルと保守/ロールズへの批判
2 差異の承認①──コミュニタリアニズムと多文化主義
サンデルの「負荷なき自己」批判/物語的探求としての生/正義にたいする善の優位/コミュニタリアンの政治像/多文化主義/コミュニタリアニズムの射程
3 差異の承認②──フェミニズムの政治理論
ジェンダー中立的な制度の限界/リベラリズムによる家族の軽視/公私区分の問いなおし/積極的差別是正/ケアの倫理/正義論の修正/ケアと民主主義
4 差異をどこまで承認すべきか
リベラリズム批判と差異の政治/立場の分岐/新しい民主主義の探求
第11章 現代の民主主義論
1 代表制民主主義への不信
ポスト・デモクラシー/文化的保守とポピュリズム
2 正統性の危機
参加民主主義/ハーバーマスの「正統化の危機」論/生活世界の植民地化
3 熟議民主主義
二段階の民主主義/熟議とは何か/制度化の試み
4 闘技民主主義
ムフによる熟議民主主義批判/対抗性と左派ポピュリズム
5 現代民主主義論の課題
熟議と闘技の関係/分極化
第12章 グローバル正義論
1 自由民主主義の適用範囲
国家を超える諸問題の噴出/ロールズによる正義論の再構成/グローバルな正義をめぐる論争
2 普遍的正義としての人権
普遍的な正義を語れるか/ポッゲの「グローバルな制度的秩序」批判/人権とグローバル資源配当
3 諸人民の法
正義論と諸人民の法/理想的理論/非理想的理論
4 国民という共同体
特別な関係としての国民/グローバルな救済責任
5 自由民主主義は普遍的か
終章 自由民主主義のゆくえ
自由主義と民主主義の結合(第Ⅰ部)/危機と再生(第Ⅱ部)/分裂の時代(第Ⅲ部)/自由民主主義は生き残れるか/国家と市場の拮抗関係/多元性と公共性/歴史にもとづくパトリオティズム/欧米の経験を超えて
あとがき
参考文献