木村元彦
( きむら・ゆきひこ )木村 元彦(きむら・ゆきひこ):1 9 6 2年生まれ。ノンフィクションライター。著書に旧ユーゴスラビアのサッカーをテーマにした『誇り』『悪者見参』『オシムの言葉』(2005年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞)、『コソボ 苦闘する親米国家』などがある。『無冠、されど至強――東京朝鮮高校サッカー部と金明植の時代』『橋を架ける者たち』では、在日サッカー選手たちの肖像を描いた。
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アン・ヨンハは、プロのサッカー選手になる夢を持つまったく無名の19歳の在日朝鮮人。
選手権大会は予選敗退だし、Jリーグではチームに一人の「在日枠」を目指すしかないし、日本代表には絶対なれないけど、走り続けた先には世界があった!
国境を越えて輝く魂の物語。
1990年代に入ると、日本サッカーがプロ化された。Jリーグが誕生したのだ。
ここからJリーグの舞台に進んで実力でプロ選手への道筋を作り、北朝鮮代表にも選出されてW杯に出場した在日サッカー選手がいる。以降、多くの在日Jリーガーや北朝鮮代表選手が続いた。サッカー選手として生きていくパイオニアとなり、後輩の将来を照らした彼は高校時代、まったく無名の選手だった。彼は、「自分の選手としての原点は浪人をしていた19歳のときです」と言う。
19歳。現在のサッカーの世界ではとうにプロ契約を済ませて代表デビューを飾っていてもおかしくない年齢である。この年で中田英寿はアトランタ五輪で活躍し、メッシはゴールデンボーイ賞を受賞し、ネイマールはリベルタドーレス杯優勝の立役者になっている。いわばすでに完成されて脚光を浴びている世代である。しかし、彼はその頃、プロどころか、どこのチームにも所属していない一人の少年にすぎなかった。
そんな男がやがて国家代表になり、W杯へ出場した。このドラマのようなストーリーを支えたのはサッカー部の出身ではなく、コーチ経験のない、これまたまったく無名のただのサッカー好きの男だった。
浪人生とただの男。二人は何もないところから、夢を見て実現させた。私は今からその物語を書いていこうと思う。(本文より)
第1章 安英学(アン・ヨンハ)が少年の頃
第2章 韓国でプレーする在日の北朝鮮代表
第3章 もう一つの夢
第4章 ConIFA――W杯に出場できない人々の大会
第5章 在日サッカー代表、ロンドンへ行く
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