2012年5月8日(火)午後5時30分から、第28回太宰治賞(筑摩書房・三鷹市共同主催)の選考委員会が、三鷹市「みたか井心亭(せいしんてい)」で開かれ、選考委員四氏(加藤典洋、荒川洋治、小川洋子、三浦しをん)による厳正な選考の結果、以下のように受賞作が決定しましたので、お知らせいたします。
ミドリノ養鶏場では、人間の頭髪のように細く、絹糸のように滑らかな羽毛をもつ「オグシチャボ」を育てている。雛子はここで幼少から父親と二人きりで暮らしてきた。親子で切り盛りしていた養鶏場に、ある日、一人の中年男が養鶏を教えてほしい、と訪ねてきた。「今度子どもが生まれるんです」と膨らんだ下腹をさする彼が通うようになってから、チャボたちは落ち着かなくなり、チャボを可愛がっている雛子も神経質になっていく。そして、父親の留守中に事件が――。
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第28回太宰治賞贈呈式は2012年6月13日、東京會舘にて行われ、
受賞者には、記念品及び賞金100万円が贈られました。
【贈呈式レポート】
6月13日(水)、東京丸の内の東京會舘で第28回太宰治賞(筑摩書房・三鷹市共同主催)の贈呈式が行われました。
三鷹市の清原慶子市長がまず主催者挨拶を行いました。1964年に筑摩書房が創設した太宰治賞が、1978年第14回をもって中断、1998年にそれが太宰治没後50年を機に三鷹市と筑摩書房の共同主催の形で復活して今回で14回めとなる。中断以前と同じ年数に達し、この間に太宰治賞から生まれた作家がどんどん活躍している。今回の受賞者のそれに続く活躍を期待し、また太宰治賞をしっかり続けていきたいと述べました。つづいて筑摩書房の熊沢敏之社長が、じつは28という数字は完全数である、と清原市長の話を受けて挨拶、つぎの完全数は496でありじつに428年後である。この天文学的な意味で記念すべき今回の受賞を心から祝いたい、受賞者のご活躍を期待すると述べました。
そして、選考委員を代表して荒川洋治氏による選考過程と選評の発表がありました。
いつものことながら選考委員の4人の考え方はばらばらで、今回も激論となり途中でだめかと思われたが、時間がたちみな平常心を取り戻し、最終的には非常にいい作品が選ばれたと思っている。純文学的に密度が高く、意識を切り替えながら孤独を勝ち取っていく、ある種の力感に満ちたところがあって、そこがよかった。大きな災害があって言葉も被災している、言葉の本来の力が見えにくくなっている、と感じている。いま、表現の立ち姿をしっかり見据えていくことが大事だと思う。そういう意味でもこの作品の受賞はよかった、と述べました。
表彰状、正賞および副賞授与のあとに、隼見果奈氏が受賞の挨拶をしました。
作家を目指したいと思い作品を書いては文学賞に応募しという生活をして5年、いまも信じられない思いがする。が、受賞はあくまできっかけなのだから、これまでと同様、書き続けていきたい。プレッシャーも感じるがわくわくもしている。精一杯がんばるのでよろしくお願いします、と述べました。
そして、津島園子さんより受賞者へ花束贈呈が行われ、小川洋子氏による乾杯の音頭で、パーティへと移りました。
*選評と受賞作、それに最終候補作品は『
太宰治賞2012
』にて読むことが出来ます。