第一章 詩1 「木」 田村隆一
③ 構成から若木 ひとつとして同じ木がない 生徒にとっては、この詩句が、この詩の中でもっともイメージしづらいようです。実は、ここがこの詩の中心ともいえるところなのですが、大事なところほどむずかしいということです。丁寧な解きほぐしが必要なところでしょう。 構成から考えれば、ここでも人間と異なる木の生活作法を表現していることになります。それも、最後の「大好き」につながるのですから、それなりのすばらしい作法でなければなりません。 まず、「ひとつとしておなじ木がない」わけですから、人間が、ひとつの星の光(太陽)だけを見て生活していて個性が乏しいのに比べて、木は、さまざまな、星の光を見て個性的に生活しているということでしょうが、まだ意味不明です。なぜ「星」なのかもわかりづらいですね。 次に、これまで木と関係性があったものを順に見ていきます。人間→小鳥→大地→空です。この→の延長上に「星」、つまり宇宙があるのです。木は、その関係性を宇宙にまで広げているということなのです。ちっぽけな対人関係の中で苦悩する人間とは違い、木は宇宙との関係の中で目ざめているのです。宇宙に比べたら、鳥が寄ってきたからどうか、などどうでもよいことでしょうね。谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」にもつながる、生あるものの生活作法として、あるべき姿・本質です。 しかし、今のは説明です。今度はいかにして生徒に実感を持たせるか、ということです。つまり、今の解説を生徒の具体にいかに着地させるかが次の問題です。なにしろ「同じ星の光りのなかで/目ざめている木はない」という表現は、イメージしづらいのですから。
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