第一章 詩3 「風船乗りの夢」 萩原朔太郎
④ まとめこの詩は、単なる 現実逃避・嫌悪・疎外感による異郷への憧れではなく、人間社会や人間関係による耐え難い束縛感と絶望とによって、人と無縁である宇宙の果てを夢想している、ある意味、自暴自棄的な心情に根ざした詩です。高校生にふさわしい詩というのがあるのかどうかわかりませんが、公序良俗からは、遠いように見えます。 しかし、誰にも、空に浮かぶ気球や、遙か上空に飛ぶ飛行機に魅了されたことがあります。また、生徒に限らず、だれでも自暴自棄になり、すべてを投げ出したいという思いを持った経験に思い当たるはずです。この詩で表現された心情が、望ましいとか望ましくないという問題ではなく、この詩は、人間の本質を表現しているということなのです。その本質が、ずばっと実感をともなって表現されているがために、鮮烈なイメージと迫力を持って読み手に迫ってくるのです。そして、この詩から得たその実感が、読み手に自分自身を掘り下げることを求めます。そして、読み手は自分の中の見えなかった自分を意識し始めるのです。 やはり、この詩を授業で取り上げないのは、あまりにもったいない。
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