ちくまの教科書 > 国語通信 > 連載 > 「高ため」を黙読する授業第四回(1/6)

「高ため」を黙読する授業

(この連載は、機関誌『国語通信』1996年春号~1999年春号に掲載された文章を転載したものです。)
第1回 わたしのアンソロジー
第2回 密室をつくる
第3回 逆習シール
第4回 テキストを編集する
第5回 モーツァルトへの手紙
第6回 教室に風を入れる
服部左右一(はっとり・さういち)
愛知県立小牧高等学校教諭
元愛知県立小牧工業高等学校教諭
『高校生のための文章読本』編者
筑摩書房教科書編集委員
長年「表現」分野の指導メソッド開発に携わる。

第4回 テキストを編集する
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1 二年目が過ぎて

 「高ため」三部作の黙読授業をはじめて二年目が過ぎた。一年目は一人ではじめたが、二年目からは国語科全員(Uさん、Mさん、ぼく)で取り組んだ。三人が黙読授業の中でそれぞれの工夫をし、情報交換をして話し合った。授業についての考え方を発展させて、新しい授業の方法もいくつか編み出した。教師側のマンネリズムと生徒の変質とによって苦境に入りこんでいた国語の授業、とくに現代文の授業の方法について一つの方向を指し示すことができたように思える。

 一年間続けてくると生徒の中にも変化が見られる。教科書と「高ため」を併用しているが、「高ため」は自分で読むものだという習慣ができつつあるようだ。読むことを楽しむ傾向も出てきた。

 生徒が提出する読書ノート「わたしのアンソロジー」にその兆しが見受けられる。ノートの書き方に工夫をこらす子もいれば、他の時は出さずに「わたしのアンソロジー」のときだけノートを出す子もいる。そういうノートに接すると教師の方もうれしくなってくる。心の高まりがこちらにも伝わってくる。

 無理な読み方を押しつけない、これを基本にして続けてきた。自分のペースで読んで、自分が気に入った箇所を探しだす。そして、簡単なメモをとる。この気楽なスタイルがいいのではないか。ノート「わたしのアンソロジー」に記入する事項については、本誌に過去三度書いたが(第三四六号「わたしのアンソロジー」、第三四八号「密室をつくる」、第三四九号「逆習シール」)、初めての読者のために今回も繰り返しておく。

 ① 作者紹介を写す。(客観的知識)

 ② リードを写す。(編集者からのメッセージ)

 ③ 本文の中からもっとも気に入った箇所を三行以上書き抜く。(作者からの声)

 ④ ③についての感想を一行以上書く。(読者のオリジナリティをちょっぴり)

 ⑤ 覚えたい漢字を一〇語以上書き出す。(ことばの学習)

 ⑥ 逆習シールを貼る。(文例を五段階評価する)

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