崔相龍
( ちぇ・さんよん )1942年生まれ。韓国・慶州出身。高麗大学名誉教授。ソウル大卒業後、東大で国際政治学の博士号取得。ハーバード大客員教授、高麗大教授・アジア問題研究所長、韓国政治学会長、韓国平和学会長、韓日文化交流委員会副委員長、駐日韓国大使、成蹊大学教授などを歴任。著書『デモクラシーの未来――アジアとヨーロッパ』(共著、東京大学出版会、1993年)、『東アジア和解への道――歴史問題から地域安全保障へ』(共著、岩波書店、1996年)など。
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現在の世界を見ると、あらゆるところで分断が起きている。弱者/強者、リベラル/保守といった対立に明け暮れている。いまこそ政治に「中庸」が必要なのではないだろうか。倫理的規範としてではなく、政治的な実行規範としての「中庸」である。東洋思想・西洋思想それぞれに「中庸」の概念を持っている。普遍宗教や普遍主義的イデオロギーが登場するより前、古代中国における孔子・孟子、古代ギリシアにおけるプラトンとアリストテレスが、それぞれ別に中庸を唱えていた。そしてそれは、倫理としての中庸ではなく、政治的な正義の実現のための中庸だった。人類は長い思考の末に、かなり早い段階で中庸の徳を知恵として持っていたのである。政治学者であり、駐日韓国大使を務めた実務家でもある著者は、今日の政治指導者に最も必要な資質を「中庸的構想力」としてとらえ、古代東洋・西洋の思想を横断しつつ、中庸の原理を掘り下げ現代に生かそうと「中庸民主主義(meanocracy)」という新たな概念を創り出した。儒学とギリシア哲学の双方に見られる中庸の思想の違いを検討し、中庸の政治哲学の深さと可能性を現在に活かすための再興する方策を考える。小倉紀蔵訳。
第1章 なぜ中庸政治なのか(問題意識と方法
中庸の概念)
第2章 古代中国の儒教政治思想と中庸(孔子の仁と中庸
孟子の仁義と中庸 ほか)
第3章 古代ギリシアのポリス政治思想と中庸(プラトンの正義、中庸、法
アリストテレスの中庸と政治体制)
終章 中庸と平和の政治体制(政治的判断の方法
政治指導者の資質 ほか)
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