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ちくま新書

賽の河原

——供養の宗教学

これが、地獄のキワ。

大切なひとを失う苦しみと、ひとびとはいかに折り合いをつけてきたのか。津軽地方の「イタコ」たちのフィールドワークをもとに、日本の供養を考える。

定価

1,012

(10%税込)
ISBN

978-4-480-07698-4

Cコード

0214

整理番号

1866

2025/07/08

判型

新書判

ページ数

256

解説

内容紹介

これが、地獄のキワ。
津軽地方の「イタコ」たちのフィールドワークをもとに、日本の供養を考える。

死別した、愛する人はどこにいってしまったのか。人間はその答えを求めて、 死後の世界についてあれこれ考えを巡らせる。 日本では、亡くなった子どもの行先として、独自の「賽の河原」が考えられた。著者は、10年以上にわたって、死者の口寄せなどで知られる津軽地方の「シャーマン」たちの調査をしてきた。本書は、「和製の地獄」とも言われる賽の河原を中心に、日本の供養を考えるものである。

目次

はじめに
賽の河原=和製の地獄/供養について考える/あの世とこの世/この世中心の世界/本書の構成

第1章 口寄せとは何か
1 「イタコ」の成立
近代以前の口寄せ/シャーマン日本代表
2 口寄せの実際
イタコの商売/口寄せには型がある/イタコになるには/イタコはシャーマンか/イタコの意識
3 なぜ口寄せは死者の言葉になるのか
口寄せの条件/真偽を超えて/イタコの現状

第2章 供養と賽の河原
1 供養とはなにか
仏典由来の「供養」/「供養」の民俗的用法/廻向という思想
2 「日本人のあの世観」とはなにか
あの世のイメージ/「成仏」という問題
3 人形供養
人以外に対する供養/人形供養/供養は死を与える
4 賽の河原の物語
地蔵と子ども/賽の河原の初出/「賽」とはなにか/唄にみる賽の河原
5 なぜ石を積むのか
近世の人口政策/善行としての石積み/封印としての石積み/生活宗教

第3章 津軽の地蔵と川倉賽の河原の祭り
1  津軽地方の地蔵
津軽には2種類の地蔵がある/地蔵を祀る
2 川倉賽の河原地蔵尊
川倉賽の河原への案内/大祭/『東奥日報』の記事より
3 供養か娯楽か
イタコの登場/イタコが消える/供養であり、娯楽である

第4章 あの世で成長する子ども
1 花嫁人形供養
花嫁人形供養の研究史/ムカサリ絵馬と巫者との関係/奉納の詳細/奉納数の変化
2 死者の成長
何歳までが「子ども」か/未完成霊/死者は成長する/卒業証書の事例から
3 死者を死者にする
わからないから、ありがたい/口寄せの型/葬儀の意味
4 変わる口寄せ
なぜ口寄せはつづくのか/変化の中で

第5章 生活の中の死者
1 仏壇を考える
仏壇と信仰/なぜ仏壇があるのか(その1)/なぜ仏壇があるのか(その2)
2 継続する絆
グリーフケアの観点から/グリーフの乗り越えモデル/継続する絆へ/手元供養
3 なぜ仏壇だけではだめなのか
位牌の意味/遺影/遺影をどこに置くのか/死者が近くにいること
4 個人の悲嘆を支える
天然のメモリーボックス/絆の変容/大きな供養と個別的供養

第6章 供養の現在
1 死者の居場所
口寄せの現場から
2 楽しい賽の河原へ

あとがき

読書案内
索引

著作者プロフィール

村上晶

( むらかみ・あき )

村上 晶(むらかみ・あき):駒澤大学仏教学部仏教学科准教授。筑波大学第二学群比較文化学類卒、同大学院人文社会科学研究科哲学・思想専攻修了。博士(文学)。宗教社会学者として青森県津軽地方の巫者を中心に、日本の民間信仰と社会との関係性を研究している。著作に『巫者のいる日常』(春風社)、共著に『現代宗教とスピリチュアル・マーケット』(弘文堂)など。

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