浪速のスーパーティーチャー守本の授業実践例

第四章 評論

2 「異文化としての子ども」 本田和子

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 モモの宝物は、鳥の羽・斑入りの石・金色のボタン・色ガラスですが、それに対してビビガールのオプションは、粉おしろいのコンパクトから、イヤリング・絹の靴下、果ては、浴用香料・銀行小切手帳などです。モモのおもちゃが想像力を喚起するものであるのに対して、ビビガールのオプションは「すでに用意されたもの」で、「想像力を必要としないもの」です。「買いそろえればいい」という発想は、想像から最も遠いところにあるものといえます。

 ともあれ、モモは時間泥棒の勧めで、このビビガールと遊ぼうとします。

 モモはべつの遊びをやってみました。それもうまくいかないので、またべつの、そしてまたべつの遊びと、いろいろためしてみました。けれどどうにもなりません。人形がなにも言いさえしなければ、モモがかわりに答えてあげられますから、すてきな会話がすすむでしょうが、ビビガールときたらなまじものを言うために、かえって話をみんなぶちこわしてしまうのです。

 決まり言葉を仕込まれた人形相手では、モモの想像力も働きません。モモには、立派な機械仕掛けのおもちゃも、ありとあらゆる既成のオプションも、想像力の阻害になるだけなのです。エンデはここで物質と精神を対比しながら、豊かな遊びがどちらにあるのかを鮮やかに表現しています。これもまた、大人の世界と子ども世界の対比を通して、子どもの世界の輝きを示しているのです。

 大人の世界の側にいるものにとっては、「異文化」である子どもの世界を実感するにはいろいろな工夫がいります。しかし、これを実感することで初めて自分たちの属する大人側、あるいは近代の問題点をみつめることができるのですから、その工夫はおろそかにできるものではありません。そういう意味でも、多くの生徒が子ども時代に親しんだ『モモ』は、十分補助線となり得ると思います。

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