安田武
( やすだ・たけし )1922‐86年。東京生まれ。思想家。法政大学在学中に学徒出陣。ソ連軍との戦闘を経て復員後、大学を中退。「わだつみ会」の再建に尽力し、1964‐66年には思想の科学研究会会長をつとめた。著書に『学徒出陣』(三省堂)、『気むずかしさのすすめ』(新潮社)などがある。
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戦争体験の伝承ということ、これについては、ほとんど絶望的である――。少年期を日中戦争の戦時下に過ごし、大学在学中に徴兵され、ソ連軍の捕虜となり復員。異常で圧倒的であり、自らの現在を決定づけた戦争体験とその伝承の難しさについて、戦中派である著者が切々と書き綴る。戦後多くの知識人が、体験を思想化・体系化して後世に伝え、反戦・平和を訴える義務と責任を説くなかで、著者はその「語りがたさ」に固執しつづけた。屈辱や憤り、自責、虚しさ、喪失、死への誘惑……。時に感傷的で非生産的と批判されながらも、断片的で矛盾に満ちた自らの戦争体験に留まり、二十年をかけてその「無念」を問うた書。 解説 福間良明
序章 なぜ戦争体験に固執するか
1(喪われた世代
学徒出陣のころ
「戦後」はまだ終っていない
「執念」と「信仰」について
私の時計は笑っている
転向・挫折・戦争体験
生者の傲岸な頽廃)
2(戦争体験の「伝承」について
追跡者の執念
農民と知識人のあいだ
戦没学生の知性の構造
死者の声・生者の声
サークル『山脈』と持続)
終章 一九七〇年への遺書
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