〈中級〉学習のために

#6『英語のハノン』音声の聞きどころ
〈私的〉ベスト3

中村佐知子(2022年3月14日 更新)

 『英語のハノン』に取り組む際、例文の内容を自分ごとに置き換えたり、登場人物に感情移入をしたりしながら、トレーニングをする方がよくいらっしゃいます。このように、例文を立体的に感じとり練習しているようすを伺うと、本当に嬉しい気持ちになります。オーディオ・リンガル・メソッドのパターンプラクティスは、意味をともなわず機械的であると、ときに批判されます。しかし、とくに「初級」後半のUnitや「中級」では例文が長くなるので、まったく意味を感じずただオウム返しのようにリピートすることはむしろ困難で、実際は、程度の差こそあれ、多くの方が個々の例文の意味を感じながら取り組んでいるのではないでしょうか。
 単調になりがちな例文を生き生きと浮かび上がらせるのは、やはりナレーターの力です。英語の(とくにアメリカ英語の)音が好きな私にとって、『英語のハノン』のナレーターから発せられる英語の発音、イントネーション、息づかい、声のトーン、すべてにたまらない愛着を感じています。
 今回は「『英語のハノン』音声の聞きどころ〈私的〉ベスト3」と題しまして、常日ごろ「この例文からはとくに意味があふれ出ている!」と私が感じている例文を紹介したいと思います(対象:「初級」「中級」)。

『英語のハノン』音声の聞きどころ〈私的〉ベスト3

第3位 「初級」Unit 3.6 Key Sentence “She’ll get good scores in the next exam.” と 1) “She should get good scores in the next exam.” (ジェリー・ソーレスさん担当)

“She’ll get good scores in the next exam.”は、ソーレスさん特有の明るい透き通った声で読み上げられます。「彼女は次の試験でいい点を取るだろう」というポジティブな展望を感じさせる声色です。一方、この次の “She should get good scores in the next exam.” では、トーンがぐっと下がり、まるで怖い先生が、自分のクラスの女子生徒について批判的に話しているかのように聞こえます。この文を、“She’ll get good scores in the next exam.” と同じ明るいトーンで読むと、文意とそぐわないものになってしまうでしょう。ここはやはり、トレーニングするときも意味の違いをトーンに反映させたいところです。

第2位 「中級」Unit14.1 2) “I never dreamed that I could win the first prize.” (ジャック・マルジさん担当)

私は、マルジさんが喉から絞り出すような声で発する、この文頭の “I” がとても好きです。この “I” からは「まさか自分が一等を取るなんて夢にも思わなかった!」という気持ちがあふれ出ているように思います。ひとつ前の例文 “I seldom have a chance to talk to her.” も “I” で始まる文ですが、これらのふたつの “I” を、マルジさんはまったく異なる読み方をしているのです。是非 “I never dreamed that I could win the first prize.” は、「欲しくてたまらなかった一等をようやく取った」気持ちを存分に乗せて練習するようにしてみてください。

第1位 「初級」Unit 6.1 1) “Who ate my pudding in the fridge?” (ジェリー・ソーレスさん担当)

ソーレスさんは、変換する前の文 “Lisa ate your pudding in the fridge.”を、比較的淡々と読んでいるのですが、変換したあとの “Who ate my pudding in the fridge?” は、一段階高いトーンで読んでいます。これにより、「私のプリンを食べたのは一体誰なの!?」という怒りがひしひしと伝わってきます。誰もが一度は感じたことのある「食べたいものを食べられてしまったときの怒り」、それを声色だけでソーレスさんは表現されています。この文は「冷蔵庫を開けたら、楽しみにしていたプリンが誰かに食べられていた」というシチュエーションをリアルに想像しながら練習してください。
 みなさんには、お気に入りの例文があったり、登場人物がいたりしますか?いつもガールフレンドと一緒にいるアニクや、20言語話せるハルキ。自分で宿題をやったと信じてもらえないボブに、賢いというより抜け目ないライラ。『英語のハノン』でトレーニングをする際は、そこで語られていることにしっかり思いを馳せ、例文の奥ゆきを味わうようにすると、よりトレーニングが楽しくなること請け合いです。
 横山雅彦先生とのリレーコラム「〈中級〉学習のために」は、今回が最終回です。『英語のハノン』の音声学習のハードルが少しでも下がれば、と始めたこのコラムでしたが、お楽しみいただけましたでしょうか。みなさまにとって、英語の音の世界を少しでも身近に感じるきっかけになることができましたら幸いです。
※「上級」のコラムに関しては近日中にご報告させていただきます。

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