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第4回 “ぼんやりとしたうしろめたさ”―定番教材の生き残り |
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小学校教材にも“生き残りの罪障感”が…
石原千秋さんは、『国語教科書の思想』(2005年・ちくま新書)の中で、国語の教科書を通してあたかも道徳ではないかのように装いながら道徳の教育を行うところに日本の国語教育の病根があると述べています。そのうえで、小学校と中学校の国語教科書を取り上げ、国語教育における「見えないイデオロギー教育」のありようを詳細に分析しています。佐藤泉さんの『国語教科書の戦後史』(2006年・勁草書房)とともに、国語教育に関するここ数年の著作の中で最も注目すべき仕事の一つです。
一つ一つの議論について詳細な検討を加えたいところですが、さしあたって、「ごんぎつね」や「大造じいさんとガン」、「海の命」など、小学生用の教科書に動物を主人公とするものが多いという指摘を行っている部分を引用してみましょう。
これらの国語教材からは「昔はよかった」というメッセージも聞こえてきそうだ。やや極端に言えば、「昔へ帰ろう」とか「田舎に帰ろう」というのが国語教科書に埋め込まれた思想なのである。これらのメッセージは「自然に帰ろう」という、より大きなメッセージに集約することが出来る。
「国語は道徳だ」と断言している石原千秋さんが「他者に出会おう」というメッセージとともに重視しているのが、この「自然に帰ろう」です。動物を主人公とする物語を読むことによって「自然に帰ろう」というメッセージを内面化した子どもたちは、「与えられた環境に対して従順な『人格』」を手に入れることになると言います。
ここに、「権力者」にとって「便利」な「イデオロギー装置」があるというのが、石原千秋さんの主張です。
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